ニューヨーク在住の日系3世弁護士、村瀬悟氏の名前を知る人はそれほど多くない。全世界に2000名近くの弁護士を擁する米国有数のモルガン・ルイス&バッキアス国際法律事務所に所属、現在はパートナーの地位にいる。
その村瀬悟弁護士が、実は11月17日(現地時間)にニューヨークのトランプタワーで安倍晋三首相がドナルド・トランプ次期米大統領と会談した仲介者である。
11月8日の大統領選本選直前、佐々江賢一郎駐米大使がトランプ陣営に接触、トランプ氏が大統領選に勝利したら安倍首相からの祝意を伝える電話を入れたいと申し入れたのがそもそもの「トランプ・アプローチ」の始まりだった。
佐々江大使は村瀬弁護士を通じて、先ず長女のイバンカ・トランプさん、次に主人のジャレッド・クシュナー氏を交えて会い、ファミリーとの関係を確立した。
そして安倍官邸はそのホットラインを通じて、11月10日の電話会談と17日のトランプタワー訪問を実現したのである。
安倍首相が世界の首脳に先駆けてトランプ次期大統領との「良好な関係」を築くことができたのは、村瀬弁護士の存在なくしてはあり得なかった。
では、村瀬悟氏(1955年生まれ)とはいかなる人物なのか。
2014年8月、86歳で亡くなった父・村瀬二郎氏が超大物日系2世の弁護士であった。カーター民主党政権下で大統領通商諮問委員に就任、その後も国務省多国籍企業諮問委員に就くなど政府の各諮問委員会メンバーを歴任した。
民間組織では、デイビッド・ロックフェラーが創設したトライラテラル・コミッション(日米欧委員会。現三極委員会)委員を務めた。
日本との関わりで言えば、ソニー創業者の盛田昭夫元会長との長い交誼は有名であり、1980年代になって同氏の政財界人脈を頼って米国進出の商社、自動車、電機など大手企業が村瀬事務所に日参したほどだ。