撮影:立木義浩
<店主前曰>
講談社のセオ部長から「このたび集英社を定年退職した田中知二さんと、上司だったシマジさんの対談を是非やってください」と依頼を受けた。
「どうして週刊プレイボーイを100万部雑誌に出来たのか。編集者というのはどんな職業なのか。そのあたりを忌憚なく語り合っていただきたいです。ぼくは、トモジさんは『編集者のなかの編集者』だと思うんです」とセオ部長はトモジを賞賛した。
人生には不可能なことも多々あるものだ。両親と会社の上司は、幸か不幸か、自分ではどうしても選べないものだ。両親のことは仕方ないとしても、アホな上司に我慢出来ず会社を辞めるサラリーマンは多いのではないだろうか。
その反面、上司と部下が肝胆相照らす仲になり、気持ちはいいが、死ぬほど働かせられる不幸もある。トモジとシマジの関係も、尋常ではなかった。
なにはともあれ、嫌がるトモジにシマジが無理矢理命令して、今回の対談となったのだった。
* * *
シマジ 先日行われた「トモジ生誕61周年満期出所祝い」のパーティーは面白かったね。お前らしい定年祝いの会だった。
トモジ 伊勢丹のバーを早退してまでスピーチに駆けつけていただきありがとうございました。
シマジ 集英社に新人として入ってはじめて配属されたのはPLAYBOY編集部で、はじめて出会った編集者がシマジだったという幸運なトモジのためなら仕方あるまい。カウンターに大勢いたお客さまに頭を下げて6時半きっかりにバーから抜け出したんだよ。
ヒノ そのパーティーはどこでやったんですか?
トモジ 六本木ヒルズの、結婚式とかをやる多目的ホールみたいなところでした。
シマジ 毛利庭園の脇にある立派な会場だったよ。
ヒノ 六本木ヒルズには疎いのですが、そこは何人ぐらい入れるんですか?
トモジ 優に100人以上入るでしょうね。
シマジ 集英社の“元女の子”たちもいっぱいきていたね。懐かしかったなあ。
ヒノ シマジさんの引退パーティーは電通の成田会長や資生堂の福原名誉会長が発起人になって、東京會舘でやりましたよね。ローマから塩野七生さんを呼んだり、京都から瀬戸内寂聴さんを呼んだり、それから司会は元NHKのスポーツアナ羽佐間正雄さんでした。まだ元気だった小沢一郎さんもきていましたね。
トモジ たしか翌週の週刊新潮のグラビアページに載りましたよね。
シマジ あれは講談社のセオが世話人として実現してくれたんだ。おれには敵が多すぎて、集英社主催でやるのは無理だったというのが現実の話だよ。その点、今回のトモジの引退パーティーはほのぼのした雰囲気でよかったね。トモジの人間性の表れだろうな。
トモジ おれだって敵はいっぱいいましたよ。パーティーにはこなかっただけで、すれ違っても目を反らすやつが2、3人はいます。
シマジ トモジ、2、3人はいっぱいとはいわないよ。おれなんて100人単位の敵がいたんだから。
トモジ 外はもちろんのこと、会社の中で会ってもおれのことがみえないんですよね。
シマジ 今東光大僧正がいっていた。「男というものはどんなに嫉妬され恨まれても、51対49なら勝つんだぞ」と。だからおれはその通りにやったんだ。
ヒノ トランプ次期大統領みたいなものですかね。
シマジ トランプと一緒にするなよ。
トモジ あっ、立木先生!
立木 今日はなあなあ対談だな。こういうことをやっていいのか。
シマジ セオからどうしてもやってくれと頼まれたんですよ。トモジを「編集者のなかの編集者」だとセオがいうもんで。
立木 なになにトモジは集英社を定年退職して集英社インターナショナルの社長になったのか。
トモジ 社長じゃないです。平の取締役です。
立木 シマジだって社長になったんだから、すぐなれるんじゃないの。トモジ、撮影の準備をするから座っててよ。レンズを向けられても緊張するなよ。
トモジ すでに緊張しています。こんなに緊張したことはじめてです。