糸井重里さんと考える「犬と猫とご機嫌につきあう方法」

大人気『ドコノコ』アプリ誕生秘話
おとなスタイル プロフィール

かくして、6月のダウンロード開始から、10月でダウンロードが10万を超えた『ドコノコ』。なかでもおもしろいのは、投稿した全員の写真が次々アップされる〝ひろば〞という画面。そこには、よそ行きの顔じゃない普段のウチノコの姿が、犬も猫もごちゃまぜになって並んでいる。

「正直、〝ひろば〞がこれほど魅力的だとは、最初は思っていませんでした。人んちの犬猫を見ておもしろいの? と聞かれることもありますが、人んちのコ、最高ですよ。

少し格好つけたいい方をすると、そこに写っているのは犬や猫ではなく、〝愛〞なんですね。猫がこっちを向いている瞬間に猫とカメラとの間にあった、そのコと飼い主のやさしい生活や真が上がるこの〝ひろば〞にはそんな小さな愛情が溢れているんですよ。それが楽しい。

しかも、いい写真だな、かわいいなと思って毎日のように同じコを見ていると、ウチノコのような親しみが湧いてくる。これってとても大事なことだと思うんです。みんながダレカノコをかわいがったり心配する気持ちになれば、不幸になる犬や猫を少なくすることにもつながるだろうし」

『ドコノコ』アプリは、アプリ上だけでなく、オフ会などのイベントも積極的に開催している。この日は代々木公園で初オフ会。糸井さんは犬の神様みたいに、みんなを抱っこして、撫でていた。

50代は犬や猫と暮らすのに一番いい時期だと思う

ブイヨンとの出会いがあったからこそ『ドコノコ』は生まれた。彼女が気づかせてくれることがたくさんある、と糸井さんはいう。

「いまブイヨンは13歳で、僕は60代。60歳を過ぎると飼い主のほうが先に死ぬ可能性があるので、次の犬を飼う資格はもう僕にはありません。今後は預かりさん(注③)をやるのかなと思うことはありますね。そう考えると、50代は犬や猫と暮らし始めたい人にはある意味、最後の時期なのかもしれません。

でも、とてもいい機会でもあります。世の中のこと、人生のことをわかってきたつもりでいても、犬や猫が教えてくれることはたくさんあって、とても新鮮な気持ちになったりするんです」

ただし、〝癒やしの存在〞や〝かわいさ〞だけを求めて安易に飼うことだけは避けてほしいと糸井さんはいう。最近では8週齢規制(注④)を導入する自治体もある。

「犬や猫なんて、と思う人がいてもいいんです。でも、犬や猫から広がる社会やネットワークは本当に深くておもしろい。彼らは何をするわけではないけど、人間にいろんなことを伝えてくれ、瞬く間に機嫌をよくしてくれる。言葉でなく、愛とは何か、いろんな愛のかたちを教えてくれる存在なんだと思います」

少しおばあちゃんになったブイヨンに、老いる尊さも学びながら。糸井さんの犬や猫とのご機嫌な日々は、これからも続いていく。

『おとなスタイル』2017年冬号より

(注)
ランコントレ・ミグノン 動物と新しい家族に出会いの場を提供するために譲渡会を開催したり、さまざまなイベントを企画。多くの動物を保護するためのボランティアとの出会いの場も提供している。
譲渡会 保護された犬や猫と新しい家族が一緒に過ごしながら相性を判断したりする、お見合いのような場所。最近は、飼うときはペットショップではなく譲渡会でと考える人も徐々に増加。
預かりさん 保護した動物の新しい家族が決まるまでの間、一時的に預かるボランティアのこと。預かり中のフード代や医療費は、団体が支払うケースが多い。
8週齢規制 生後56日(8週齢)に満たない子犬、子猫を母親から引き離すと、精神的外傷を負う可能性が高く、問題行動を起こしやすくなるので、それを防ぐための規制。
いといしげさと/1948年生まれ。群馬県出身。コピーライター、エッセイスト、作詞家など多彩な分野で活躍。’98年に開設したウェブサイト『ほぼ日刊イトイ新聞』は、インタビューやコラム、手帳などの商品も人気。著書に『ボールのようなことば』、『ブイヨンの気持ち。』などがある。