日本政府が伝えない南スーダン「国連PKO代表」不在の異常事態

自衛隊は、本当に無事でいられるのか?
半田 滋 プロフィール

平穏な状況であれば、国際貢献でもあるPKOへの参加に問題があろうはずもない。だが、13年12月に最初の武力衝突が発生して以降、市街地で行う道路補修でさえ防弾チョッキに小銃を持った隊員に守られて活動しなければならないのが自衛隊の実情なのである。政府が活動継続の条件とした「隊員の安全確保」「意義のある活動」は風前の灯火となっている。
 
ところが政府はそうは考えていないようだ。先月15日に新任務を閣議決定した際、政府が発表した「基本的な考え方」にはこうある。

「こうした厳しい状況においても、南スーダンには世界のあらゆる地域から60カ国以上が部隊等を派遣している。現時点で、現地の治安情勢を理由とし部隊の撤収を検討している国があるとは承知していない」

ケニアは国連の対応が不満で撤収するのだから、確かに「治安情勢を理由」にはしていない。だが、問題は撤収の理由ではない。部隊撤収によって治安が不安定化しかねないこと自体が大問題なのだが、その点には触れていない。

 

国連と食い違う日本政府の見解

また「部隊の撤収」にのみ着目しているが、UNMISSへの参加には「部隊参加」、要員のみを派遣する「個人参加」の二通りあり、7月の武力衝突で警察を育成する文民警察部門に「個人参加」していたドイツ、英国、スウェーデンはいずれも要員を引き揚げている。都合の悪い情報は伏せて、都合よいことばかりを強調する。官僚の悪しき得意技が、この発表文から透けて見える。
 
政府の評価が我田引水なのは、治安状況についても同様だ。去る10月にジュバを視察した稲田防衛相は、ジュバの状況は「比較的、落ち着いている」と断定し、新任務付与の閣議決定につながった。しかし、稲田氏がジュバにいたのはわずか7時間、しかも7月に戦闘があった地域は避けて通った。
 
国連が8月12日から10月25日まで2カ月以上に及ぶ情勢をまとめた報告書によると、ジュバとその周辺の治安情勢について「『volatile(不安定な、流動的な)』状態が続いている」とし、「国全体の治安は悪化しており、とりわけ政府軍が反政府勢力の追跡を続けている中央エクアトリア州の悪化が著しい」と明記した。同州にはジュバが含まれるのである。
 
また国連人道問題調整事務所(OCHA)のジョン・ギング業務局長は11月16日、国連本部で南スーダンを視察した状況を報告、昨年の同時期より100万人多い、推定370万人が深刻な食糧危機に直面しているとして「食糧不足が今ほど悪化したことはなく、さらに悪化する情勢にある」と述べた。

なぜこれほど日本政府と国連の見方が違うのか。安全保障関連法が成立して1年以上、また同法が施行されて半年以上が経過した。自衛隊を活用する「積極的平和主義」を掲げ、成立を急いだ安保法がいつまでも適用されないようでは説明がつかない、というのが安倍晋三首相の本音ではないのか。

日々悪化する現地情勢に加え、PKO代表不在という不安。そのような中で、自衛隊が曇った目でしか状況判断しない政府の犠牲者になる事態だけは避けなければならない。