飛び抜けて高い死亡率…平尾誠二、川島なお美を襲った「がん」の正体

手術も治療法も確立されていない
週刊現代 プロフィール

そもそも胆管とは肝臓で作られた胆汁を流す管のこと。胆管のわきには胆汁を貯める胆嚢という部位があり、それぞれにがんができると、胆管がん、胆嚢がんとなる。

胆管がんは男性に多く、胆嚢がんは女性に多い。また、肝臓内の胆管にできるがんを肝内胆管がん、肝臓外の胆管にできるものを肝外胆管がんと分類する。

「胆管がんは一般的に黄疸で見つかるケースがほとんどです。黄疸になると皮膚や白目が黄色くなり、尿は茶色く、便が白くなります。また、全身にかゆみが出てきます。

しかし、平尾さんや川島さんのように肝内胆管がんの場合は、黄疸が出ないケースがあり、発見が遅れることが多いのです」(前出の齋浦氏)

そもそも症状が出る前に、通常の検査で発見することはとても難しい。採血による腫瘍マーカーは、がんだからといって必ず数値が上がるわけではないし、超音波検査では胆嚢がんは比較的、見えやすいが、胆管がんは見つかりにくい。

結局、原口さんのように症状が出た後、内視鏡を使って診察し、ようやくがんと診断されるケースがほとんどなのだ。そして、多くの場合、その時点でがんは広がっている。

「入院してからの時間の経過はあまりに早く、父の病状について理解し、受け止めることは正直、難しかったです。入院してすぐの頃は、手術をして悪い部分を切除すれば問題なくなるだろうという気持ちだった。胆管がんの恐ろしさを理解するまでには、まだ時間が必要だったのです……」(前出の原口さん)

入院して1ヵ月後に手術をして、膵頭や十二指腸も切除。リンパ節転移が4ヵ所見つかり、ステージⅢとされた。体力回復を待ってから抗がん剤治療も始めた。

「自宅に戻ってからも抗がん剤治療は続けましたが、結局、がんが見つかってから半年で肝転移の範囲が広がっていることがわかりました。その時点で抗がん剤の治療も終わりになり、万策尽きた。

『これほど多くの人が亡くなるがんなのに、薬が2種類しかないなんて。他になにかできることはないのか』と悔しい思いでした」(原口さん)

 

末期は痛みも激しい

前出の齋浦氏が胆管がんの治療の難しさを語る。

「胆管がんの場合、ステージⅢまでは手術が可能ですが、予後が悪い。手術ができた場合でも5年生存率は50%を切っています。肝臓がんに比べて、抗がん剤も効きにくく、外科手術しか治す手段はありません。

血管が周囲に絡んでいることに加え、胆管自体が血管と並行しているため、手術は極めて高難度。下部胆管の場合は膵臓の手術になり、肝門部や上部胆管は肝臓の手術になるため、医師には肝臓と膵臓の両方の手術ができる総合力が求められます」

全国胆道癌登録調査報告によると、手術ができた場合の1年生存率は70%、3年で37%、5年で26%。手術できなかった場合は、それぞれ22%、3%、1%という絶望的な数字になっている。

肝臓への転移が見つかった原口さんの体重は急激に落ちて行った。70㎏あったものが、15㎏近く痩せたという。

「目に見えて痩せ衰えていくのに加えて、本人は家族に見せまいとしているのですが、相当な痛みがあるようでした。最終的には医療用麻薬でコントロールしてもらいました」(原口さん)

がんが各所に転移すると当然、症状は深刻化する。とりわけ骨への転移は、強い痛みを伴う。

「そんななかでも父は弱みを見せようとしませんでした。逆に家族に迷惑をかけてすまないという言葉をくり返していた。運命として受け入れるしかない難しいがんに侵されながらも、家族への気遣いを忘れない人でした」

10ヵ月に及ぶ闘病生活の後、原口さんの父は亡くなった。

「父が亡くなって、病室から外を眺めると太平洋がよく見渡せた。それまで美しい景色を眺める余裕もありませんでした」

運命のがんの訪れは、あまりに突然で、その苦しみは一瞬で駆け抜ける嵐のようだった。だが、その後の遺族の哀しみは終わることがない。

「週刊現代」2016年12月3日号より