「東京オリンピック返上」という選択を真面目に考えてみる

実は前例もあった!
週刊現代 プロフィール

仮に都民投票を行って「東京オリンピック返上」となれば、代わりの開催地はどうなるのか。

デンバー市の返上が決まった時は、開催までの残り時間は3年しかなかったが、IOCが世界各地の都市に打診した結果、12年前の'64年に冬季オリンピックを開催したオーストリアのインスブルックに何とか決まった。一度使った施設を再利用することができるからだ。

もし東京がオリンピックを返上した場合は、冬季よりも大規模な夏季大会で、代わりの開催地を探さねばならない。選定をゼロからやり直すのは到底ムリなので、現実的には、同じアジアで'08年開催地の北京、あるいは'00年開催地のオーストラリア・シドニーなどが候補になるはずである。

オリンピックが超巨大ショービジネスでもある以上、返上となると、1000億円単位の違約金の発生は避けられない。とはいえ、「3兆円という巨額の予算と比較すれば、安いもの」と考え、支払うことを支持する国民も決して少なくないだろう。

築地市場の豊洲新市場への移転に関しても、都庁内部では10月以降、「移転そのものの白紙撤回もあり得る」と囁かれるようになっている。同様に、東京オリンピックの「白紙撤回」という究極の策が、賛否はどうあれ、全国民を否応なく巻き込んで大激論を起こすことは間違いない。

自民党と安倍政権、そして組織委員会を相手に、大立ち回りを演じる小池氏——彼女を支持するか支持しないか、われわれ全員が判断を迫られる。そのとき小池氏は、日本中を振り回す「最強の政治家」と化すのだ。

〔PHOTO〕gettyimages

天皇陛下のお気持ち

もうひとつ、小池氏がひそかに目を配っていることがある。それは、安倍政権が手を焼いている、天皇の「生前退位」である。

現在、政府の集めた有識者会議で識者が意見具申をしているが、「右派」と目される識者のほとんどが、「生前退位」に反対している。しかし、ある全国紙皇室担当デスクは「生前退位ができないとなると、オリンピックに対する天皇の『配慮』が無に帰す」と言う。

「天皇陛下が『生前退位』したいと言い出した背景には、『もし2020年の前半に自分が死んだら、オリンピックどころではなくなる』という懸念がある。退位さえしていれば、万が一のことがあっても国を挙げた『大喪の礼』を行う必要はない。こう考えているのです」

安倍総理は、「生前退位」の実現のために必要な皇室典範の改正には、乗り気でない。あまりに時間と手間がかかりすぎるため、政治生命を使い果たしかねないからだ。だからこそ、有識者会議では反対派の識者を中心に意見を集め、先送りしようとしている。

しかし、「生前退位」が実現しないとなれば、オリンピック直前に「その日」が来てしまうかもしれない。他でもない天皇自身が、それを誰よりも心配しているのだ。

いずれ国政に戻って総理を目指そうと考えている小池氏にとっては、これは格好の取引材料である。

安倍総理が総裁任期延長で2021年まで居座るつもりなら、東京オリンピックを人質に取り、「天皇陛下の生前退位を認めないと、オリンピックを返上する」という交換条件を突きつける——そんな政治家人生を賭けた大勝負に、今の小池氏ならば出かねない。

一寸先も見通せないのが政治の世界ということは、先のアメリカ大統領選でも見た通り。小池氏の「窮余の一策」が世界に激震をもたらす日は、もう間近に迫っている。

「週刊現代」2016年12月3日号より