「東京オリンピック返上」という選択を真面目に考えてみる

実は前例もあった!
週刊現代 プロフィール

賛成する都民は多い

就任から3ヵ月あまり、これまで小池氏はずっと、自民党が作り上げた既存の秩序をぶち壊す姿勢を見せ、喝采を浴びてきた。だがそれだけでは、早晩行き詰まってしまうことは明らかだ。

とはいえ、弱気になっては、「小池旋風」を維持することができない。これまで高々と持ち上げられてきた以上、落とされたときの衝撃もまた大きい——だからこそ、ここで小池氏は、日本中が驚愕する「ウルトラC」を、先手を打って繰り出すほかないのである。

「『東京オリンピック返上』を国民に提案する。いわば、『ちゃぶ台返し』戦法ということです。

オリンピックをやるかどうかの決定権は都知事にあります。もちろん政府・自民党から猛烈な反発を浴びることは確実ですが、国民の中には『こんなに費用がかさむなら、返上してもいい』という声は意外に多い。

トランプ(次期アメリカ大統領)支持者のように、森さんや石原(慎太郎元東京都知事)さんのような既得権益者が、吠え面をかく様子を見たい、という国民もいるでしょう」(都庁幹部)

総理大臣が衆議院解散で信を問うのと同じく、小池氏が自らの首を懸けて五輪返上を国民に問えば、国を二分する激論になることは間違いない。

小池氏は、この「ウルトラC」を本当に実行する権限を持っている。そして、「オリンピック返上など、聞いたこともない」、「世界に対して恥をかくだけではないか」と思う向きもあるだろうが、実は前例がある。

〈決断のときです。国民に、いや、世界中に『すみませんでした。間違いでした。オリンピックは他のところでやってください』と言うべきです〉

これは「チーム小池」のメンバーが、オフレコの場で小池氏に詰め寄った時の言葉——ではない。かつてアメリカ・コロラド州の州都デンバー市が、'76年に開催予定だった冬季オリンピックを返上したときの、地元下院議員の発言だ。

違約金は意外に安い

当時のデンバー市が置かれた状況は、背筋が寒くなるほど、今の東京とよく似ている。

 

同市が冬季オリンピックの開催地に当選したのは'70年のこと。'76年がコロラド州の創立からちょうど100周年にあたるということで、記念事業的な意味合いの強い立候補だったという。

招致のため、市当局が国際オリンピック委員会(IOC)に提出した計画には「自然環境に配慮したオリンピックにします」「予算は最小限に抑えます」といった、まるでどこかで聞いたことのあるような文言が躍った。

だが'72年には、当初の予算見積もりが小さすぎ、債券を発行して市民から追加資金を募らないと開催できないこと、競技場を作るために、山肌を削るといった大規模な工事が必要になることなど、招致のために市当局が並べた売り文句が、どれも完全に「絵に描いたモチ」だったことが判明する。

そして同年秋、州民投票が実施され、開催反対派が勝利。「オリンピック返上」が決まったのだ。

東京も、'13年のプレゼンで「コンパクトな会場配置」、「強固な財政基盤」といった公約を掲げて招致を勝ち取った。だが、新国立競技場の白紙撤回、大会エンブレム盗作問題、そして予算の際限なき膨張を目の当たりにして、メッキがすっかり剥がれ落ちた今となっては、「幻のデンバー大会」が他人事とは思えない。

「小池さんからすれば、いざとなったら、『オリンピックの予算がここまで膨れ上がったのは、森さんや石原さんをはじめとする招致委員会・組織委員会の責任だ』『彼らの私利私欲のために、都民が大金を負担するのはおかしい』という理屈が立つ。

安倍政権は猛反対するでしょうが、IOCが『この状態では、もう東京には任せられない』と判断した場合には、返上が認められる可能性が高い」(前出・都庁幹部)