ゼロからわかる「金利上昇」というリスク 〜いったい何が問題なの?

日銀と財務省が恐れていること
加谷 珪一 プロフィール

予算が組めなくなる!?

金利の上昇が、デフレ脱却と景気回復による健全なものであれば何の問題もない。だが景気が回復しない中で長期金利だけが上昇すると、いろいろと面倒なことになる。

これまでは、住宅ローンが順調な伸びを示し、REIT(不動産投資信託)の値動きも堅調だった。一部の個人投資家は巨額のローンを組んでマンションやアパートの一棟買いを行う、いわゆるサラリーマン大家さん業に邁進している。

 

だが、これらの動きはすべて低金利が続くことが大前提であり、金利の上昇が止められなくなると、一連の歯車が一気に逆転する可能性が出てくる。

さらに大きな問題になりそうなのが財政である。今のところ低金利が続いているので、国債の利払い費用は年間10兆円程度で収まっている。

だが、金利が急騰して仮に5%まで上昇したとすると、理屈上の年間利払い費用は40兆円を突破する。数字の上では、税収のほとんどが利払いに消えてしまい、事実上、政府は予算を組めなくなってしまうのだ(仮に金利が上昇しても、すべての国債が高い金利のものに入れ替われるまでには数年の時間的猶予がある)。

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現実にこのような水準まで金利が上昇する可能性は限りなく低いが、まったくあり得ないという話ではない。こうした事情が背景にあることから、日銀や市場関係者は金利の上昇に対して神経質にならざるを得ない。

日銀のバランスシート劣化を懸念する声もある。日銀は2004年度から長期国債の評価方法を低価法から償却原価法に変更しており、国債の価格下落分を損失として計上する必要がなくなっている。

つまり満期まで保有していれば国債価格を気にする必要はなく、取得したコストが額面を上回っている場合のみ、その差分について、毎年均等償却すればよい。

だが金利が急騰し、日銀が保有する国債に事実上、大きな損失が出ているということになると、市場の日銀に対する信頼度が大きく低下するのは避けられない。金利の上昇は避けたいというのが彼等の偽らざる気持ちだろう。

とりあえず日銀の指し値オペは効果を発揮したかに見える。だがこれは言ってみれば「伝家の宝刀」であり、実際に刀を抜くことはできない。

こうした日銀の状況を市場が見透かし、金利の上昇を試すような展開となった場合、日銀はいよいよ実弾を投入せざるを得なくなるだろう。

そうなってしまうと、追加緩和の有無を議論していた半年前に完全に逆戻りしてしまうことになる。政府、日銀とも薄氷を踏む日々が続きそうだ。