外国人だらけのオフィス
話題書『グーグルを驚愕させた日本人の知らないニッポンの企業』(山川博功・著)、そのニッポン企業の名はビィ・フォアード。京王線調布駅から徒歩数分のビルの中にある。
エレベータを降り、オフィスの中に入ると、仕切りのないオフィス内にはダダッとPCが置かれた机がならぶ。一見どこの会社でも見られるような光景だ。
しかし、ちょっと違うのがなかにいる社員たちの顔ぶれ。黒人に白人、アジア系だけれど、明らかに日本人とは違う人々も。彼らが日本人と混在して働いているのだ。

なにしろ社員数173人中、外国人が54人。出身の国籍も26ヵ国に及ぶ。なかには日本に5人くらいしかいないと言われるソマリア人のうちのひとりも働いているという。
社内で流通しているのは、日本語と英語のちゃんぽん、ロシア人とパキスタン人が仕事の話を日本語でしている隣では、日本人とカメルーン人が英語で話しているという具合。それがこの会社の日常の光景だ。いったいなぜ? 著者でもある山川博功(ひろのり)社長に話を聞いた。
「世界中の顧客に対応しようと思ったら増えた。いまでは30言語に対応しています」

アフリカでは圧倒的な知名度
ビィ・フォアードは、中古車と中古自動車部品を海外に売る会社である。もともと中古車買い取りを専門にやっていた山川氏が「海外に売ったら儲かるかも」と考え、2004年に輸出専門部門の会社として設立。
何回か痛い目にもあったが、失敗を生かし急成長。昨年度の年商は約500億円に達した。現在取引先は世界125の国と地域に及ぶ。そしてその販売手段はインターネット。
ビィ・フォアードは日本でいちばん売上の大きい越境ECサイトを運営している企業でもある。
日本ではまだ無名のこの会社だが、アフリカはじめ新興国では圧倒的な知名度を誇る。
「たとえばタンザニアに出張に行くとき、会社のジャンパーなんか着ていると、空港で、おー、おまえはビィ・フォアードの関係者かと声をかけられる。私が社長だとわかると、『おーい、ここにビィ・フォアードの社長がいるぞ』と大声を出されて人がわらわらと寄ってくる(笑)。なんか芸能人になった気分です」
ビィ・フォアードはそれだけブランドになっているのだ。街に出ると、よくビィ・フォアードのステッカー貼った日本車をみかけるという。
なにしろタンザニア、ザンビア、モザンビーク、コンゴなどのアフリカ諸国では、Google、Facebook、Instagramなどと並んでbeforward.jp(ビィ・フォアード)がサイトの人気で上位を争っているのだ。
その実態を知ってびっくりしたGoogleの副社長が、山川社長に話を聞きたいと急遽来日してきた。
ビィ・フォアードの人気の秘密は注文してから商品が届くまでのスピードの速さと、価格の安さ。サイトを見るとクルマの状態もよくわかるように工夫されているし、疑問があった場合はメールで問い合わせればすぐに自分の国の言語で対応してもらえるので安心感もある。
「ビィ・フォアードがやるまで、アフリカから注文しても届くまで3ヵ月以上かかるのは当たり前、以前はドバイ経由で運んでいたので、その間に中間業者も入って、クルマ代以外の輸送費や経費もバカにならなかった。
しかし日本からタンザニアや南アフリカへの直行便を開拓したので、いまでは1ヵ月ちょっとで現地に届く。値段もはるかに安くなりました」