バーニング社長・周防郁雄氏が初めて語る「芸能界と私」

あの「移籍騒動」からサザンのことまで
田崎 健太 プロフィール

サザンが所属する予定になっていたのは、「りぼん・なかよしグループ」というプロダクションだった。ホリプロ社員だった奥田義行が、歌手の井上陽水と立ち上げた会社だ。周防と奥田は、ホリプロ在籍期間は重なっていないが、面識はあった。

「奥田君はぼくより1つ年下なんです。それで『東元さんから、グループ預かったって?』と連絡をとりました。『5000万円で譲ってくれないか』と持ちかけると、『周防さんがそう言うなら、わかりました』。

その後、ぼくは大里君に電話を入れて『いいグループを見つけたぞ』と言った。そうして、サザンはアミューズ所属になったんです」

周防にとって、アミューズはバーニングのグループ企業という意識だった。しかし――。

 

「サザンの曲の中で、バーニングパブリッシャーズが音楽出版権を持っているのは、デビュー曲から『いとしのエリー』までの5曲だけです。その後、サザンがあんまり売れたせいか、アミューズから『音楽出版権を返してほしい』と弁護士を通じて内容証明が届いたんですよ。

実は大里君は、ぼくが奥田君に5000万円払ったことを知らない。ただ、弁護士まで頼んで喧嘩してもしかたがないと思ったので、それ以降のサザンの曲は、音楽出版権を持っていません。

アミューズからは、ぼくが出した運営資金は返してもらっていません。アミューズが株式上場したときにも、何の挨拶もなかった。大里君が上場して豪邸を建てた、という話を聞いたから、当時のうちの役員に『アミューズに、10億円貸してくださいと言って来てくれ』と行かせました。見事に断られてしまいましたけれどもね(笑)」

ぼくは口下手なんですよ

周防が早くから音楽出版権に目を付けたのは、これが経営上の鉱脈になると考えたからではないか、と訊ねると「そんなことは、考えたこともない」という素っ気ない答えが返ってきた。

「自社のタレント(からのマネージメント収入)だけで食べていくというのは、あまり好きじゃないんですよ。それよりも、よそのプロダクションに所属するタレントのお手伝いをして、プロモーション費や音楽出版権を頂いたほうがいい。それだけだったんです」

前述したように、バーニングは、その影響力と比較すると驚くほど小規模である。周防の名刺の裏側には、郷ひろみや小泉今日子をはじめ10人のタレントの名前が書かれているだけだ。

「ぼくは自分の目の届く範囲しかやりたくないんですよ。マネージャーに対しては『将来、自分が社長になるつもりで頑張ってくれ』と教えている。だから、みんな独立していくんですが、それは仕方がないことです」

こうしたバーニング出身マネージャーのプロダクション、加えて周防との関係が深いプロダクションが、巷では「バーニング系」と呼ばれている。

「バーニング系を名乗って威張っているプロダクションがあるのだが、本当か、という問い合わせを受けたこともあります。しかし、全く知らない会社でした。直接電話して抗議しようとも思いましたが、さすがにそれは周囲から止められました」

マスコミでも、周防については様々な報道がある。そのほとんどが悪いものだ。反論しようと思わなかったのか。

ぼくの問いに周防は、どう答えたらいいのか分からない、という困った顔になった。

「ぼくは元々、口下手なんですよ。もう何でもいいや、という気持ちもありました」

周防が今もこだわっているのは、いい歌を世に出すことである。

「ぼくは、良い歌が売れないということが納得できないんです。自分がいいと思った歌が売れなければ、ぼくはこの業界を辞めなきゃいけないと考えている。それは、自分のところの歌手でなくてもいいんです。利益にならなくても、良いものは良い。全く関係なくても応援する」

想像とは異なり、芸能界の「ドン」は最後まで控えめな男だった。(文中敬称略)

「週刊現代」2016年11月26日号より

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