バーニング社長・周防郁雄氏が初めて語る「芸能界と私」

あの「移籍騒動」からサザンのことまで
田崎 健太 プロフィール

小泉今日子の奇跡

バーニングプロダクションの地位を確固たるものにしたのは、小泉今日子の登場だった。彼女は'81年のオーディション番組『スター誕生!』で合格、翌年『私の16才』でデビューしている。

小泉について、周防は「売れる」という確信があったという。

「彼女は最初から、自分をどのように売っていくかを考えていましたね。もちろん曲は作曲家の先生に頼みますが、彼女は自分で詞を書くこともあった。また、彼女は偉ぶることなく幅広く誰とでもつき合える。人間的に素晴らしい女性ですよ」

ナベプロ、ホリプロなどの大手プロダクションと比べると、バーニングの所属タレントの数は少ない。にもかかわらず、芸能界で大きな力を持っているのは、バーニングが「音楽出版権」ビジネスに早くから目をつけたからだと言われている。

一例として挙げられるのが、サザンオールスターズの音楽出版権の一部をバーニング傘下のバーニングパブリッシャーズが保有していることだ。

音楽出版権とは、この連載でも度々触れてきたように、作詞作曲者から楽曲の権利を預かることを言う。

サザンオールスターズはご存じのように、'78年『勝手にシンドバッド』でデビューした国民的バンドである。サザンが所属しているプロダクションはアミューズ。同社は福山雅治をはじめ、100人を超える歌手・俳優が所属する大規模プロダクションだ。

アミューズと資本関係のないバーニングがサザンの音楽出版権を保有しているのは、周防が何らかの圧力を掛けたからではないか――と巷間囁かれてきた。

今回、周防が取材を受けたふたつ目の理由が、このサザンの音楽出版権についてだった。

「アミューズとぼくの関係をここではっきりとさせておきたい。ぼくはアミューズ設立、そしてサザンのデビューに深くかかわっているのです」

周防はこう切り出した。

 

「まず、(歌手の)吉田拓郎さんから人を通じて『広島に凄い子がいる』という話を聞いたんです。それで会いに行ったのが原田真二。彼はぼくにこう言いました。『周防さん、遠いところまで来ていただきありがとうございます。ひとつ、希望があります』。何かと訊ねると、『自分のための会社を作って欲しい』と。ぼくは彼を一目見て気に入った。そこで彼のためだけに、バーニングとは別の会社を作ることにしました」

課題は、新会社で原田を担当するマネージャーだった。周防は「いいマネージャーを育てるのは、タレント育成と同じくらい難しいのです」と言う。

「3~4ヵ月マネージャーを探したのですが、見つからない。そのとき、ナベプロの社員が1人、アメリカに勉強に行くという話を聞いたのです。その社員は、渡辺晋さんとぼくとのメッセンジャーボーイみたいな存在だったので面識がありました。彼と話し合って、50対50の出資で会社を作ることになった。それがアミューズだったんです」

Photo by gettyimages

サザンとぼくの関係

その社員の名前は大里洋吉といった。現在、アミューズの代表取締役会長を務めている。

「アミューズという名前は、彼が考えました。そしてぼくは資金は出すけれど、2人の連名だとこちらにも欲が出るかもしれないし、君もやりにくいだろう、ぼくの分も持っていてくれという約束をしたんです。文書はありません。口約束です」

周防はその後数年間、アミューズの運営資金を出していたという。

'77年10月、原田は『てぃーんず ぶるーす』でデビューし、ファーストアルバムはオリコン史上初の初登場1位を獲得した。作詞作曲も手がけ、ピアノを弾きながら歌う天才ミュージシャンとして、一躍人気となった。

しかし、原田はわずか2年ほどでアミューズから独立している。原田が去った後、アミューズの屋台骨を支えたのがサザンオールスターズだった。

周防はこう振り返る。

「うちの所属歌手だった石野真子の打ち合わせをビクターでやるというので、ぼくが同行しました。すると、ビクターのディレクターの東元晃さんが『いいグループの曲が出来たから、聴いてくれ』と言ってきたんです。東元さんは、日本コロムビアでちあきなおみさんの『喝采』などを担当した方です。

それで5曲聴いたら、全部良かった。中でも気に入ったのが『勝手にシンドバッド』でした。それで思わず東元さんに、『この曲で行きましょう!』と言った。

すると『お前にあげるとは言ってないぞ』と。こんないい曲を聴かせておいて、それはないでしょう――そんな感じで、1時間ほど粘って、東元さんが彼らを誰に預けることにしたか聞き出したのです」

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