卒業生の半分は行方不明!? 「東京藝大」に生きる愛すべき変人たち

元気が出る奇想天外エピソード
週刊現代 プロフィール

「現役の藝大生に『卒業生の半分くらいは行方不明だよ』と聞かされて、一瞬言葉を失いました。流石にそんなことはないだろうと調べてみたら、本当だった」

事実、東京藝大の平成27年の進路状況を見てみると、卒業生486名のうち「進路未定・他」が225名。実に半分近くの進路が不明なのだ。

「ほとんど授業に出なかった」(本人談)〔PHOTO〕gettyimages

人生、なんとかなるさ

ところが、さすがは藝大。行方不明こそが、「勝ち組」だという。

「先日、ある美大で教授をしている藝大の卒業生と話していたら、『定職についちゃった俺は、負け組だよなぁ』と、ポツリと言うんです。

 

彼らの価値観では、バイトでも何でもしながら、自分の求める最善の表現を生涯をかけて突き詰めるのが芸術家としての幸せ、という部分がある。いい大学を出て、良い企業に入って、定年まで勤め上げるのが幸せという『常識』とは別の価値観を生きているんです」

国立西洋美術館や国立科学博物館などが立ち並ぶ上野の山は、江戸の昔から日本の芸術文化の中心を担ってきた。その息吹は、いまも藝大のキャンパスに脈々と宿る。

「学生や卒業生に藝大のどこが好きかと聞くと、たいがい『自由にできること』そして『周りのみんなも自由にしていること』という答えが返ってきます。

例えば、ブラジャー・ウーマンは入学して最初の学生歓迎会であの姿を披露したそうなんですが、それを見た教授は『今年の新入生は大人しいな』とまったく驚かなかった。それくらいで誰も驚かないし、引きもせず、受け入れてくれる。藝大は、彼らが存分に自己表現するための、貴重な受け皿なんです」

二宮氏の妻は、現在卒業制作の真っ最中。家中を粘土でドロドロにしながら、日夜制作に励んでいるという。

「なんでも自分で作ろうとする妻の姿を見ていて、ふと思ったんです。『人間、どうやったってなんとか生きていけるもんだな』って。人とは違う道をひたむきに生きる彼らも、本質的には僕たちとなんら変わらない。そう理解できると、『僕たちだってもっと自由に生きていいんじゃないか』って、勇気が湧いてきますよ」

一見、変人だらけの藝大生。だが、彼らの生き方を知ると、なんだか楽しくなってくる。

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「週刊現代」2016年11月26日号より