〔PHOTO〕gettyimages

国内シェア50%超、競合買収…「絶好調」企業トップが語る「肯定力」

現場たたき上げ社長の経営理念とは?
アース製薬・川端克宜社長

アース製薬が絶好調だ。ロングセラー「ごきぶりホイホイ」「アースレッド」など、カテゴリーナンバーワン商品を揃え、さらには'14年に競合企業の白元を買収。殺虫剤シェアも国内50%超を実現した。

社長の川端克宜氏(45歳)は営業成績ナンバーワンを続け、同社が弱かったガーデニング用品事業を倍々ゲームで成長させた現場叩き上げ。彼に話を聞くと同社の「失敗を肯定する力」の強さを感じた。

 

考えるよりもまずは行動

肯定力

営業で実績を残したと言っても、無理をした覚えはありません。あっけらかんとした性格なので、何か大変なことがあってもストレスを感じないのでしょう。結局、ビジネスで大切なのは「当たり前のことの積み重ね」だったのです。

まず、小売店の担当者に「川端が来たなら買ってやる」と言ってもらえる人間関係を築こうとしました。そのため、仕事内容だけでなく趣味や人柄も含め、相手を理解しようとしました。小売店のご担当が「車が好き」と言えば車の雑誌を、「釣りが好き」なら釣りの雑誌を買い、家が雑誌だらけになって困ったこともありました。

もちろん、中には無駄な努力もあったと思いますが、私は小さなことは気にせず「まずはやってみよう!」とポジティブにいろいろ試していました。

欠席

白元を買収したのは社長就任直後のことでした。当時、白元の業績は芳しくなく、負債もあった。しかし事業買収は、我々が防虫剤のカテゴリーでトップに躍り出るチャンスでもありました。

そして迎えた役員会。今も記憶に鮮やかなのは、なんと、創業家出身の前社長(現会長の大塚達也氏)が欠席されたことです。それは「先代は口を出さない」、本当は心配に決まっているけど、「失敗を怖れずトップとして成長せよ!」というメッセージだったと思います。

私だけでなく、当社は組織的にも「失敗を肯定する」価値観を持っているのです。それが現在の業績に結びついているのだと思います。

約束

縁は不思議です。アパレルの企業に就職が決まった直後のこと。当時付き合っていた彼女を家に迎えに行くと、お父さんが出てきて「いない」と言う。どうも私が、夕方6時からの約束を16時と勘違いしたらしく、しかもお父さんに「まあ上がっていきなよ」と言われたのです。冷や汗をかきながら2時間話し込み、就職先も聞かれました。

すると翌日、彼女から「父が不機嫌だ」と聞かされました。アパレルはチャラチャラしている、などと言うのです。これは困ったと改めて人材募集をしている企業一覧を見ました。すると、アイウエオ順に並んでいて、最初に「この会社知ってる」と目にとまったのが当社でした(笑)。

今でもあの時、約束の時間を間違えていなければどんな人生を歩んでいただろう、と思うことがあります。

経営の根幹とは

後発

ヒット商品を生み出すため、最も大切な施策は「お客様のご不満をなくす」こと。商品開発時、よく「業界にない画期的なものを!」と力みますが、私は「それ本当に必要なのか?」と疑問に思うことが多いですね。

例えばガーデニング用品のパッケージに小さな文字で「トマト、ナス、キュウリ」などと対象となる植物の名前を並べても、売場では読みにくい。それより、トマトやナスの絵がドーンとあるほうがわかりやすいですよね。当社のガーデニング部門は後発でした。しかし怖じ気づかず可能性を追求すれば、勝てるようになるのです。

組織

社を活性化するには、部署や、上司部下の壁を越え、コミュニケーションを取るしかありません。ただし、私にはひとつこだわりがあります。「コミュニケーション」と言うと「話すこと」だけを指すと誤解されることがある。でも本当は相手に「伝わった」ことをもって本当のコミュニケーションは成立すると思いませんか?

そのためには「口を酸っぱくして言う」「報告書に悪いことが書いてあっても目くじらを立てず現場の話を聞く」といった工夫が必要です。これらを徹底していくうちに、社員がアイデアを出し合い、問題意識が共有され、売り上げが伸びていくようになる。それが組織の面白さだと思います。

凡事徹底

私は当たり前のことを実現することが、経営の根幹だと思っています。例えば海外進出の場面。東南アジアは殺虫剤市場が日本ほど成熟しておらず、ユーザーが使い方を熟知していません。だから日本のように「この場面で効く」と細かく分類された商品でなく「とにかく効く」商品を売っています。事業は現地化する、というのが当社の基本です。

一方、日本では「虫を殺す」商品同様に「虫を寄せつけない」商品にも力を入れています。これも市場の成熟にあわせて商品開発を行う、マーケティングに忠実な事業展開です。

これからも、商品開発の現場では「お客様目線」、経営では「失敗も怖れずチャレンジを」と、どの企業でも言われる―けれどもなかなか実現できないことを徹底してやり、皆様に便利な商品をお届けしたいと思います。

(取材・文/夏目幸明)

川端克宜/かわばた・かつのり
1971年、兵庫県生まれ。近畿大学商経学部(現在の経営学部)を卒業後、'94年にアース製薬へ入社。大阪支店長などを経て、'14年に代表取締役社長へ就任、以来現職。主力製品の殺虫剤だけでなく、「バスロマン」や「モンダミン」等の商品を持つ日用品部門も経営の柱として成長させる

週刊現代』2016年12月3日号より