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ライトヘビー級頂上決戦を制するのはコバレフか、ウォードか

2016年ボクシング界最大の一戦
杉浦 大介 プロフィール

そのキャリアを振り返ると、ウォードが強豪とコンスタントに拳を交えたのは2012年9月、WBA・WBC世界スーパーミドル級タイトルマッチのチャド・ドーソン(アメリカ)戦まで。

以降はプロモーターとのトラブルと故障でブランクを作りがちで、過去4年間でわずか4試合しか行っていない。その4戦もトップレベルの相手は含まれておらず、ウォードはしばらく“半休養状態”だったと言っても大げさではない。

いかに超絶テクニシャンのウォードでも、せいぜいクラブファイターどまりの相手から、一気にパウンド・フォー・パウンドで最高級の選手にまで対戦者のレベルを上げるのは余りにもリスキーではないか。

ロシア人王者の勝算

(コバレフのパワーパンチはどんな相手も恐れさせる破壊力を持つ Tom Hogan - Hoganphotos/Roc Nation Sports)

ボクシングのスキルも備えたコバレフは危険な相手である。特にストレート並の破壊力を持つ左ジャブをコバレフが上手く使った場合、ビッグイベントの舞台を待ち望んできたロシア人が序盤からペースを掴むことも十分に考えられる。

コバレフとしては、アマ120戦、プロ30戦という百戦錬磨の経験を持つウォード相手にKOを狙いすぎるべきではない。序盤にダメージを与える場面があったとしても、12ラウンドを考えたペース配分は必須。そして、ウォードがインサイドで得意のクリンチ、ホールド戦法に来たとき、押し負けない馬力を最後まで保つ必要がある。

 

コバレフとトレーナーのジョン・デビッド・ジャクソンはこれらの課題に対処してくると見る。コバレフが勝った方が間違いなくよりエキサイティングなファイトになるだけに、願望も込めて、筆者はロシア人王者が中差の判定勝ちを手にすると予想したい。

(ウォード<右>が勝つとすれば、クリンチの多い凡戦になる可能性も否定できない Photo By Khristopher Sandifer/Roc Nation Sports)

2011~12年頃のウォードなら、誰が相手でも負ける姿を思い描くのは難しかった。しかしそれ以降、エリート王者は全盛期の多くを無駄にしてしまった。そんな過去数年のツケが大舞台でついに出るのではないか。

もちろんウォードが全盛期のシャープさを取り戻していた場合、フルラウンドを通じて試合巧者ぶりを発揮することは十分に考えられる。鍵は最初の数ラウンド。判定勝負が濃厚だが、序盤の展開、内容でその後の流れと勝者がある程度は読めるようなファイトになるだろう。

2016年の米ボクシング界が低調だったことは誰も否定できまい。HBOの予算削減やPBCの迷走もあって、今年度を象徴するようなビッグファイトはごく僅かだった。そんな1年も終わりに近づいている今、今年の“The Biggest Fight”コバレフ対ウォード戦にかかる業界の期待は大きい。

2015年のメイウェザー対パッキャオ戦に続き、2016年最大のファイトまでもが凡戦に終わったとすれば、業界の被るダメージは小さくない。

そんな厳しいシナリオを避けるべく、今週末の一戦はハイレベルでエキサイティングなファイトになることを望みたい。この試合がドラマチックな結末を迎えれば、“メイウェザー以降”の時代を迎えたボクシング界にも再び勢いがつくはずである。