電通「屈辱の強制捜査」の大打撃!最悪のシナリオはコレだ

積み上げたプライドがズタズタに
週刊現代 プロフィール

乗り込んだのは「特殊部隊」

これに加えて、今回の捜査が異例のスピードで進んだのは「過重労働撲滅特別対策班」、通称「かとく」の存在が大きい。彼らについて、当の東京労働局監督課「かとく」主査は次のように説明する。

「『かとく』は去年の4月から東京労働局と大阪労働局に配置され、今年の4月からは厚労省本省にも置いています。今回のケースは、東京労働局内では我々が扱っていて、本省の『かとく』とも連携を取って動いています。

我々が扱うのは、一般の労基署の案件よりもより悪質なものや、大企業が組織ぐるみで行っているものです。それらは巧妙にその体質が隠蔽されている場合が多い。これらに対応できる高度な捜査技術を持ったメンバーが集められています」

「かとく」の実績は華々しく、過去には靴チェーン店「ABCマート」で取締役ら3人、ディスカウント店を展開する「ドン・キホーテ」で執行役員ら8人を書類送検するという「大物案件」を次々とこなしてきた。まさにブラック企業取り締まりのプロ集団と言っても過言ではない。

弁護士の郷原信郎氏は次のように語る。

「ある部署の労基法上の問題が恒常化していたのであれば、その部門の担当役員が事情を知らなかったとは考えにくい。厚労省や『かとく』も、できるだけ上位の会社幹部を送検することを目指して捜査をすることになる」

これまでの企業も大手ではあるが、電通は日本のメディアを牛耳るフィクサー的存在。「格」が違うぶん、やるからには徹底的にやる準備を「かとく」は進めている。

さらに過去のケースは小売店が従業員に過重労働を強要していたが、電通は会社ぐるみでの強要が体質化していたわけで、経営陣が責任を問われることは必至だ。

実態はもっとひどい

全国紙の厚労担当は次のように語る。

「『かとく』は今回の捜査で、社員たちの本社への実際の出入り時間のデータと、入力された出退勤の記録を入手したようです。双方を突き合わせるとわかるのは、会社にいた時間と記録された労働時間のギャップ。

たとえば会社にいたのは12時間のはずなのに、なぜか勤務時間は8時間として記録されていた場合、労働時間を何らかの方法で『ごまかし』ているのではないかと、『かとく』は想定しているのです。

また月々の労働時間を見て、たとえば繁忙期なのに他の月と残業時間がほとんど同じ、ということになれば、逆に繁忙期にもかかわらず残業していないのか、と疑いが生じることになる。こうした捜査で労働基準法違反に該当するのかどうかを裏付けていくはずです」

つまり「かとく」が目をつけているのは、長時間労働の実態に加え残業時間の「ごまかし」が行われているかどうか。その上で残業代が未払いだとしたら、電通は労働基準法違反で立件されることになる。

元電通社員でLamir代表の藤沢涼氏は、そのような「ごまかし」は「『暗黙の了解』としてまかり通っている」と明かす。

「自ら命を絶った新入社員の高橋まつりさんに対して、労働基準監督局は月間100時間超の残業があったとして労災認定しましたが、私は彼女がより多くの残業を強いられていたのではないかと思います。

電通の社員、特に新入社員をはじめ若手社員の残業時間は月に200時間はザラ。労働基準法の『36(サブロク)協定』で認められている所定外労働時間は70時間なので、130時間もオーバーしていることになります。ですが70時間を超えた残業時間を申請すると、上司からは『お前の仕事の効率が悪いんじゃないのか』と指導を受けてしまう。

ではどうするかというと、やはりあの手この手で残業時間を『ごまかし』ていくしかありません。こうした行為は、出退勤を管理している上司に『そうしろ』と教えられてやり始め、やがて社内全体の『暗黙の了解』として体質化していくのです」

藤沢氏は、電通社員が実際にどのような方法で「ごまかし」を強いられているかも語る。

「本社の1階のエントランスにはゲートがあり、社員がここを通るときにICチップ内蔵の社員証をかざすと入退館が記録されます。でもこれを普通に通過していると、200時間の残業がそのまま記録されてしまう。

そこで電通の社員は実際よりも早い時間に打刻し、残業を終えた深夜は、このゲートを飛び越えたり、匍匐前進で通過したりとなんとか退勤記録をつけないようにしていました。

また本社ビルの46階にはレストランが入っているのですが、そこを経由して一般向けの出入り口を利用すると、ゲートを通過せずに済みました。残業が多くなった日は多くの社員がここを通って帰っていきました。

さらにこの入退館記録とは別に、勤務管理表を毎日つけなければならなかったのですが、ここで毎日、2〜3時間ずつ勤務時間を削って上司に申告するわけです。

たとえば、備考の欄に『食事に出ていた』『自己啓発のために英語を勉強していた』などなど、適当な理由をつけるのです。これがいま巷で言われている『私事在館』なのですが、このような操作を繰り返すことで、月の残業時間を70時間以内に抑えているのです」