アメリカが「駐留費全額負担」を求めてきたら、こう言ってやればいい

カネを払うだけなんてあってはならない
半田 滋 プロフィール

米軍は、そもそもなぜ日本にいるのか

そもそも米軍はなぜ、日本にいるのか。外務事務次官、駐米大使を歴任し、「ミスター外務省」と呼ばれた村田良平氏が2008年に上梓した『村田良平回想録』の中で、答えが示されている。少し長くなるが、安保条約について述べたくだりを引用してみよう。

「1952年4月発効のいわゆる旧安保条約は、日本を占領している米軍が、敗戦とともに主に占領目的で抑えていた日本国内の諸基地のうちこれはというものを、そのまま保持することを合法化する目的でのみ締結されたものであるといえる。

1960年の現行安保条約は、いくら何でも旧安保の内容はひどすぎるとして改訂を求めた日本側の当然の要求にもとづいた交渉で、米国が最低限の歩み寄りを行った結果である。

この条約もその本質において、米国が日本国の一定の土地と施設を占領時代同様無期限に貸与され、自由に使用できることを骨格としていることは何人も否定できないところである。これらの基地の主目的は、もとより日本の防衛にあったのではなかった。

日米安保条約は、国際情勢は著しく変わったのに、一度も改正されず、締結時からすでに48年も経っている。一体いつまでこの形を続けるのか(中略)

思いやり予算の問題の根源は、日本政府の『安保上米国に依存している』との一方的思い込みにより、その後無方針にずるずると増額してきたことにある。

米国は日本の国土を利用させてもらっており、いわばその片手間に日本の防衛も手伝うというのが安保条約の真の姿である以上、日本が世界最高額の米軍経費を持たねばならない義務など本来ない。もはや『米国が守ってやる』といった米側の発想は日本は受付けるべきではないのだ。」

トランプ政権が誕生する今こそ、村田氏の言葉をかみしめたいと思うのは筆者ばかりではあるまい。気になるのは安倍首相がどう考えているかだ。

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首相は14日の参院環太平洋連携協定(TPP)特別委員会で答弁に立ち、「日米とも駐留米軍が果たす役割によって利益を得ていると考えるべきだ」と述べ、「駐留経費も日米間で適切な分担が図られるべきだと考えている」と協議に応じる考えを示唆した。

全額負担とまではいかないが、増額には応じる、ともとれる。仮にそうなら対米追従のシンボルとしての「追い銭」にほかならない。

 

米国が転換点に立つのに「米国と価値感を共有する日本」(政府見解)が現状追認でいいはずがない。米国の日本への関心が薄れる中、中国との間合いのとり方を含め、日本はあらたな外交、安全保障政策を模索すべきだろう。

例えば、一都八県の上空に広がる米軍の優先空域「横田ラプコン」がどれほどハブ空港化を目指す羽田空港の障害になっているのか、米軍再編により大半の実戦部隊が沖縄から消える海兵隊は抑止力といえるのか、であれば辺野古新基地は不要ではないのか、30もの都道府県にある米軍施設・区域(専用施設は14都道府県)は本当に必要なのか、などなど……。在日米軍のあり方を根本的に見直す好機は今なのだ。

今後、尖閣諸島をめぐる争いに米国の軍事力を期待できないとすれば、安倍政権が「存在しない」とする領土問題の存在を認め、日中交渉によって解決するしかない。米国に頼らない自立した外交戦略を構築するのは今をおいてほかにない。

トランプ・ショックは日本に再出発の機会を与えている。