なぜ、相模原障害者殺人事件の犯人は一部の若者に支持されたのか?

若者の「報われなさ」を読み解く
中島 丈博 プロフィール

崩壊する介護現場』(中村淳彦著)は「介護の世界には夢や希望はなにもなく、将来性もあるとは思えない。あるのは『需要』だけである」と断じて、センセーショナルなまでの筆致でその現況を暴いている。

頻出する事故、入居者への暴行事件。2010年2月に春日部市の特別養護老人ホームで起きた、入居老人3名の連続虐待死事件は、当時29歳の犯人が入職直後の4日間に「イライラしてやった」という異常さ。

行政が措置制度として行っていた介護を捨てて、2000年に介護保険制度が実施されて以来、介護は福祉ではなくビジネスとなり果ててしまったための著しい人材劣化と現場の混乱である。

 

老人ホームをテストする』(岡田耕一郎、岡田浩子共著)は介護施設での困難な現況をひとつひとつ丁寧に拾い上げている。中でも、ぎりぎりの人員で現場を回しているのが常態でありながら、最近採用されている老人ホームの「家族的」と称される全個室・ユニットケア方式に対して、精神的ストレスと肉体的ストレスの両方で職員のダメージは深刻さを増していると疑義を唱えている。

一方では利用者に「ありがとうと言われるために頑張るのがやりがい」という聖職意識を職員に押し付ける宗教団体による経営組織があり、現実には「ありがとう」ひとつ言わずに文句ばかり並べ立てて駄々をこねる利用者、批判ばかりするその家族がいる。

「きつい、汚い、給料が安い」の3Kの介護施設には当然のごとく貧困世代が雪崩れ込み、福祉から排除されている貧困世代の若者と比較的手厚く遇されている、生産に役立たない高齢者層らが直接対峙する。介護施設や福祉施設、終末期治療病棟を舞台にして、大袈裟に言えば、内戦が始まっているのではないのか。

相模原市障害者施設の殺傷事件、川崎の有料老人ホームでの連続殺人事件、横浜大口病院での中毒死事件など全て同根のものと思われてならない。

週刊現代』2016年11月26日号