清原、杉内、新井…プロ野球「FA」で幸せになった選手はいない? 

「裏切り者」と呼ばれる野球人生
週刊現代 プロフィール
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閉ざされる監督への道

巨人と阪神。豊富な資金力を持つこの2チームが、FA市場で「乱獲」するのはオフの恒例行事。

今年、FA権を行使した選手でとりわけ注目されているのは、オリックスの糸井嘉男(35歳)、横浜DeNAの山口俊(29歳)、西武の岸孝之(31歳)、ソフトバンクの森福允彦(30歳)の4人だろう。

早くも糸井には阪神、山口と森福には巨人、岸には楽天が熱視線を送っている。

阪神の今季盗塁数59はセ・リーグ最下位の数字。ひとりでほぼ同数の53盗塁を決め、パ・リーグ盗塁王に輝いた糸井の脚力と打力は、阪神にとっては垂涎の的だ。

 

「身体能力だけを見れば一級品。でも、阪神の選手に求められるのは野球の能力だけではない。熱狂的なファンや常時張り付くマスコミへの対応にかかる労力は、他チームの比ではない。独特の言動で『宇宙人』とさえ呼ばれる糸井選手は、そういう部分の気遣いとは無縁の選手。その点で冷遇されないか、また、今の阪神の大人しいチームカラーの中で浮かないかという心配もある」(スポーツ紙阪神担当記者)

なんとしても糸井を引き止めたいオリックスは、4年総額18億円という破格の条件を提示したと言われるが、この現状を前出の江本氏が嘆く。

「導入時のFA制度は、実力がありながら出場の機会に恵まれない選手が移籍の機会を得て、他チームでもっと活躍できるようにするという趣旨だった。ところが、実際にはアメリカと同様、1円でも多くカネを払うチームに行く選手が大半で、単なるマネーゲームと化してしまっている」

この、「カネで動いた」という印象がよくないのだろう。契約制度が確立されているアメリカでは当然の権利として受けとめられているFA権行使も、日本ではいまだ、古巣のファンから「裏切り者」の烙印を押されてしまう。

移籍した年のオープン戦、広沢は慣れ親しんだ神宮球場で「裏切り者ーっ」と強烈なヤジを浴び、江藤は古巣・広島の投手陣からブラッシュボール攻めにあっている。

'14年の途中まで西武の監督を務めていた前出の伊原氏は、岸の行く末を気にかける。当時、オフにFA権取得を控えた岸を、こう諭したという。

「『FAで出ていくのもいい。他球団で活躍するのもひとつの道ではある。でも、お前が現役を辞めた後を考えてみろ』と言いました。『西口(文也)を見てほしい。彼は最近なかなか勝てないけれど、西武からは大事にされている。もし、彼が他球団に出ていたら、とっくにクビになっていただろう』と。岸も、そのときは納得してくれた」

現役21年のすべてを西武に捧げた西口は'13年以降一軍で1勝もあげられなかったが、'15年まで現役を続け、自ら選んだタイミングでユニフォームを脱いだ。引退試合のインタビューで、「僕は幸せです」と語り、ファンの大歓声に手を振った西口は、引退後すぐに西武のフロント入り。来季は二軍コーチに就くことが決まり、将来の監督への道を着々と歩んでいる。

その一方で、「傭兵」であるFA選手には、年俸面でもシビアな待遇が待っている。上がる時は上がるが、下がるときもまた容赦がない。

先にも挙げた杉内の昨季の年俸は、5000万円。一昨年の5億円から野球協約上の減額制限を大幅に超える9割減は、球界史上最大減俸だった。

そうして「役目を終えようとしている傭兵」である杉内の「後釜」として、いま、巨人は山口に狙いを定めている。

「彼は187cmの体躯に似合わず神経質で、すぐに顔に出る。記者の間では、『ピンチになったら唇の色を見ろ。紫になるから』と言われているくらい。巨人に移籍してDeNAファンからブーイングを浴びれば、簡単に崩れてしまうのではないか」(スポーツ紙デスク)