1日でも健康寿命を延ばすために知っておきたい「医療費節約の考え方」

不要なクスリ、無用な手術
富家孝

「健康寿命を延ばす」にはおカネが必要

そこで、誰もが望む「健康で長生き」を目指すために、医療費をどう抑えればいいのか?  をとことん考えて、私はこのほど『無用なクスリ 不要な手術』(講談社現代新書)を著しました。

あなたが受けている治療は、はたして医療費に見あったものなのか?  飲まれているクスリは値段に見あったものなのか? そもそも本当に効くのか? がんになったとき治療費はどれくらいかかるのか? 手術をすべきかどうか? 介護費用はどれくらいみればいいのか? 「終の棲家」を老人ホームとするなら、その費用と介護はどうなっているのか? いちばんおカネがかかる終末期の治療をどうすべきか? など、医療を経済の面から徹底的に考えます。

 

たとえば、毎年、同じ病院で同じ内容の人間ドックを受ける人は、病院の「最上のお客さん」です。降圧剤の服用を検討するのは「年齢+90」以上を目安にすべきで、「上は147mmHg」という基準値に高齢者は惑わされない方がいいのです。「がん検診」も、年齢によって、受けても意味のあまりないものがたくさんあります。

日本の医療・福祉制度の原則は「申告制」です。したがって、国や医療機関は積極的にはなにも教えてくれません。自分から申し出て、減らそうとしないかぎり、言われるままの金額を支払わなければなりません。つまり、医療費を安くするためには、それなりの制度に対する知識が必要となるのです。

私が医者になってから、すでに40年以上がすぎました。医学部を卒業して短い医局生活を終えた後は開業医となりましたが、経営の才覚がなかったために病院はつぶしてしまいました。その後は、医療コンサルタント、医療ジャーナリストとして活動し、裏も表もあらゆる面から医療の現場をつぶさに見てきました。また、近年は医師紹介業も行ってきましたので、介護の現場にもよく足を運んでいます。

この間、私がしてきたことは、常に患者さんの側に立って医療を考えることでした。端的に言うと、「医者に嫌われる医者」であり続けようとしてきました。ですから、メディアでは医療を批判する側に立って仕事をしてきたのです。そんな私も、すでに60代後半。自分の死を意識するようになっています。

自分が選んだ「終の棲家」で、そのときまで元気で暮らし、そのときが来たら家族に見守られて死んでいくのが理想だと思うのですが、現代のような社会ではたしてそれができるかと考えると、はなはだ疑問です。しかも、これには確実に金銭的な問題がついて回ります。

実際のところ、いくら健康に注意しても、老化は止められません。私たちは必ず死にます。しかも、どんな死に方になるかは、元気なうちはわかりません。ただ、言えることは、どんな死に方になろうと、それまでの間、それなりにおカネがかるということです。つまり、私たちは自分が負担できる範囲で医療と介護を受け、そのなかで死んでいかねばならないわけです。

それがどんなものになるか? どんな選択ができるのか? まずは、その現実を知らないと、「健康寿命を延ばす」ことが難しい時代が来てしまったのです。

『不要なクスリ 無用な手術』(講談社現代新書)より構成

ふけ・たかし  医師、ジャーナリスト、ラ・クイリマ代表取締役。1947年大阪府生まれ、65年大阪教育大学附属高校天王寺校舎卒業、72年東京慈恵会医科大学卒業。80年医療法人富家会理事長就任。早稲田大学講師、日本女子体育大学助教授、青山学院大大学講師などを歴任、新日本プロレスリングドクター、医療コンサルタントを務める。著書は『「死に方」格差社会』(SB新書)など64冊。「医者に嫌われる医者」を自認し、医者だからわかる医者の問題点を患者の立場で、指摘し続けている。
「降圧剤? 歳を取れば血圧が高いのは当たり前」「高額療養費制度を熟知してがん治療費の無駄を減らせ」「医者に手術を勧められたらどうするか?」「抗がん剤を飲んでいいのは何歳までか」「がん10年生存率と無用ながん手術」ほか、医療費を節約し健康寿命を延ばすために知っておきたい「医療の不都合な真実」