タレントを支配する巨大利権「テレビCM」のしくみ

「ザ芸能界 TVが映さない真実」第6回
田崎 健太 プロフィール

芸能人が出たいCMとは

CMと芸能界の力学を理解するうえで、避けて通れないのが、総売上高2兆円を誇る広告代理店最大手・電通の存在だ。

'53年に民間テレビ放送局、つまり民放が開局すると、電通はすぐに本社・大阪支社にテレビ担当部署を新設した。同年、全広告費における電通の占有率は前年の16.2%から24%に急増している。テレビの広告費が新聞のそれを超えたのは'75年である。

テレビCMと電通の飛躍は切っても切れない。

 

なお、広告業界は大きな金が動く世界だ。関係各所への影響を考えて、記事中の証言はすべて、複数の広告代理店関係者を取材、精査したものを使用している。電通と、広告業界不動の第2位である博報堂のCM制作方針を対比してみると、電通の影響力の源泉が分かる。

「博報堂のクリエイティブは職人気質の人が多く、営業の指示を聞かない傾向がある。一方、電通は体育会系というか、営業の意向を汲んでくれる。その体質が業界ナンバーワンのクライアントに向いている。

例えば、トヨタ自動車。トヨタは自分たちがどんな広告を打つべきなのかはっきりと分かっている。広告代理店は自分たちの言うことを聞いてくれればいいという考え。その意味で電通はトヨタが右と言えば、みんなが右を向いてくれる。

一方、業界2位、3位の企業は、どのように広告を打つべきか悩みがある。一緒に悩んでくれる博報堂は彼らにとって心強い。つまり電通は業界1位の企業に、博報堂は2位以下に強い」

電通が制作するCMに出演することは、タレントにとって、「誰もが知る業界トップ企業の広告塔になれる」ということを意味する場合が多い。

〔PHOTO〕gettyimages

実は、電通のような広告代理店と、タレントを抱える芸能プロダクションが直接取引をすることは原則としてない。ましてや前出のレプロのように、プロダクションがクライアント企業と交渉するというケースは完全な例外である。

通常、広告代理店と芸能プロダクションの間には「キャスティング会社」と呼ばれる、文字通りタレントのキャスティング仲介を専門とする企業が入る。

「タレントを抱えているのは大手プロダクションから個人事務所まで様々なところがある。ひとつのキャスティング会社は、1000社以上のプロダクションと仕事をしているといわれています」

広告代理店にとっては、クライアントこそが絶対である。しかし、もしクライアントの方針が覆った場合、広告代理店が芸能プロダクションと直接交渉していると、両者の条件をうまく調整することが難しい。そのため、キャスティング会社という緩衝地帯を作っているともいえる。

「テレビCMはプロダクション側としては実入りのいい仕事。ただ、タレントのイメージを守らなくてはならない。もちろん、ナショナル・クライアントのCMならば誰も文句は言わない。しかし、女性タレントならば生理用品のような商品広告、あるいは消費者金融のCMなど、出るか出ないかジャッジを下す必要が生じる場合がある。

ジャッジを下すことが出来るのは社長しかいないということもある。ジャニーズやホリプロのように広告担当窓口をきちんとおいている企業はごく一握り。オーナー社長が全ての権限を持っている場合が多い。そうした際の談判といった、具体的交渉をキャスティング会社がやるのです」