医者が明かす「痛い死に方ランキング」ワースト50

最もつらいのはあの「がん」です
週刊現代 プロフィール

肝臓がんの場合

膵がんに近い難治性のがんとして胆管細胞がんがある。先日亡くなったラグビー選手の平尾誠二氏や女優の川島なお美さんを苦しめたのもこのがんだ。

胆管は普段意識されない部位だが、肝臓で作られた胆汁という消化液を十二指腸に運ぶ役目をする。がんの発見が遅れがちで、膵がんと同じような症状が起きる。

同じく肝臓がんも発見が遅れがちな病気だ。肝臓はがんに浸潤されても自覚症状が出にくく、「沈黙の臓器」と呼ばれている。肺、大腸、胃、膵臓についで日本人の死亡数が多いがんでもある。

症状としては体重減少、黄疸など様々あるが、肝臓がんに限らず、肝臓の病気に特徴的なのが腹水の発生だ。

「肝臓の機能が低下すると血管外に水分が出て行ってしまい、腹に水がたまって、まるでカエルのようになる。ひどい場合は、水を抜いてもらわなければなりません。肺や胸のあたりに胸水がたまり、呼吸困難を感じることもあります」(都内大学病院内科医)

腹水がひどい場合、「プールに入って、鼻の下ぎりぎりに水面があるような圧迫感」があるというから、そんな状態が続くと体力のみならず、病気と闘う意欲すらも失ってしまうだろう。

また肝臓がんや肝硬変には、全身こむらがえりという症状もある。

「全身のこむらがえりが起きると、患者さんは体をのけぞらせ痛がります。この痛みにはモルヒネも使用できません」(日比谷クリニック大和宣介氏)

 

愛も記憶も失う

日本人の死亡者数第1位の肺がんはどうか。これは肝がんの腹水でも生じた苦しい呼吸困難を伴う。肺がんの専門家である聖路加国際病院呼吸器内科の内山伸氏が語る。

「一般的にがんは骨に転移すると痛みを訴える患者さんが多いですが、肺がんの場合は、肺全体に転移して息苦しさに悩まされる人が多い」

言うまでもなく人は息をせずには生きていけない。24時間、病の苦しみを意識しなければならないという意味で、呼吸器の病気で死期を迎えるのはつらいことだ。

同じ意味で、食事をするたびに痛みや苦しさに向き合わなければならない喉頭がんや舌がんといった、頭頸部の腫瘍も生きる気力を削がれる病といえるだろう。

肺のがんは肝臓や脳に転移する確率も高い。脳の腫瘍は、また別の意味でのつらさがある。米国ボストン在住の医師、大西睦子氏が語る。

「難治性の脳腫瘍だった米国人女性が、部分的な開頭術による脳の側頭葉の切除を行いました。ところが、その後に再発、もはや進行は止められないという状況になり、余命6ヵ月と言い渡された。

その後は、頭蓋骨が割れるような激しい頭痛、絶え間なく襲いかかるてんかんの発作に苦しみ続けました。言語障害も起きて会話もままならず、最終的には最愛の夫の顔を目の前にしても彼の名前を思い出せなくなってしまった。

彼女は結局、医師による自殺ほう助、いわゆる安楽死を選択しました」

日本では米国のような安楽死は認められないので、脳腫瘍を患った患者は混濁する意識と記憶の喪失、そして激しい痛みに苦しみながら、死の訪れを待つことになる。

このように長期間にわたって身体的・精神的苦痛と向き合うのが難治性のがんだ。医学がいくら進歩したといっても、その苦しみは簡単に和らぐものではない。