大橋巨泉さんの妻がはじめて語る「夫婦の愛」

死へ向かう日々にわかったこと
大橋寿々子

愛は「バランス」です

自分に得になることは一つもないのに、言わないと気がすまない性格でした。それもこれも、あの人はやっぱり「日本が好き」だからなんです。

コラムでは「成長することだけが豊かさなのか、身の丈に合った幸せもあるだろう」と、一貫して主張してきました。安倍政権に対して批判し続けたのも、日本の未来を守るためです。

主人は、仕事ももちろん真面目でしたが、本当のことを言うと、遊びのほうがもっと真面目でした。「遊びこそ真剣にやらなければ、面白味が分からない」というのがあの人の哲学だった。

 

亡くなってから財布やポケットから小さなメモがたくさん見つかりましてね。「ゴルフのチップショット ゆっくり上げてゆっくり降ろす」とか書かれているんです。とにかく「メモ魔」であり、「情報魔」でしたね。

主人はテレビの世界では「わがまま」な人と映っていたかもしれませんが、根は優しい人でした。そのおかげで永六輔さん、王貞治さん、ビートたけしさん……などいい友人にも恵まれました。

特に永さんのことは、同じ下町生まれで(巨泉さんは両国、永さんは浅草)、元々2人とも早稲田大学中退の放送作家ということもあり、尊敬していました。「永さんはカッコイイ、ボクの憧れ」と。

帰国したら必ず永さんのラジオにだけは出演していましたからね。永さんも主人も楽しそうで、晩年『徹子の部屋』に永さんと一緒に出たのも、永さんが「巨泉が出るなら」と言ってくださったのがきっかけです。

色んな方から「巨泉さんは天国で何をしていると思いますか?」とよく聞かれるのですが、いまはまだ天国にはいないみたいなんです。永さんの本に書かれていたのですが、「亡くなったあとに行く場所は、キリスト教が天国で、仏教は草葉の陰」らしいんです。たぶんゴルフ場のラフかなんかにいるんじゃないですか。

だからあの人はまだ逝ってないんです。実際ここに御骨がありますしね。主人は私の「体の一部」です。365日一緒にいて、同じものを食べてきましたからね。

愛は「バランス」だと思います。主人は私を一生懸命愛してくれました。ですから私もそれに全力で応えたいんです。だからもう少し、主人と一緒にいさせてください。

「週刊現代」2016年11月19日号より