――日本は権力構造に大きな問題がある、と。
権力というのは必ず腐敗するものなんです。そして、本来、司法というのは権力をチェックするのが役割です。人が支配するのではなく、憲法や法律が支配する仕組みにしないといけない。
だから、個々の裁判官だけが悪いんじゃないんです。日本人はそういう問題の立て方をしがちですが、それは違う。「権力構造」に問題があるんです。いい人がいても、押し流されてしまう。基本的な構造こそがまず問題にされるべきなんです。
権力は放っておけば腐敗するから市民が監視しないといけない。その視点が日本人には不足している。だから、根本的なところで誤る。戦争しかり、原発しかり。
細かなところでは、日本人は立派です。電車だって遅れない。製品も丁寧に作られる。でも、大きなところで間違っていたら取り返しがつかないんです。
――権力小説は多々ありますが、どんなところが本書の特徴になりますか。
たくさんの本が権力の非情なメカニズムを描いています。が、多くの場合、それらは、外の人が情報を手に入れて書いているんですね。中の人間の目ではない。でも、私は、本物の権力を間近で見てきました。その意味で、この小説は、私にしか書けないと思います。
1年がかりで書きましたが、興味深く読みやすいものにするために、編集者の厳しい指摘を得て3度も書き直しました。まずは小説として面白くないといけないですから。これを読んで司法、裁判所、裁判に興味を持ったら、ぜひ新書や専門書も読んでみてほしいです。
(取材・文/上阪徹)
『週刊現代』2016年11月26日号より