# 憲法

改憲勢力が3分の2を占めたのに、なぜ改憲論議は盛り上がらないか

そもそも憲法って何ですか?
木村 草太 プロフィール

今よりも素晴らしい憲法を手にするために

このように、自民党や日本維新の会の改憲提案の中にも、議論してみる価値のあるものはある。

しかし、9月26日に召集された臨時国会の議論は低調だ。国会議員から賛否のメッセージが発せられたり、メディアで熱い議論が交わされたり、という状況にはない。

改憲派として知られる安倍首相も、どの条項をどう改正すべきかについて積極的に発言することはなく、憲法審査会の議論に期待すると述べるに止まっている。発議に向けた政党間の調整や、世論形成が、面倒くさくなってしまったのではないか、とも見える態度だ。

なぜ、改憲をめぐる議論は、低調になってしまうのだろうか。それは、憲法改正の提案に、国民を惹きつける「希望」が欠けているからだろう。

憲法は、過去の様々な国家権力の失敗の経験から、そうした失敗を繰り返さないようにするためのチェックリストだ。憲法を創るときには、現に生じた国家の失敗を分析した上で、「より良い解決を導くにはどうしたらいいか」と徹底的に考えられているはずだ。

 

だからこそ私たちは、国家が何らかの失敗をしていると感じた時、憲法の条文を読み、そこに託された先人たちの知恵に学ぼうとする。例えば、憲法97条を見てほしい。

【日本国憲法】
第九十七条  この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。

この条文には、「自由で民主的な国家をつくり、基本的人権の尊重を確立しよう」という、当時の人々の強い希望が込められている。この条文を読むことで、現在を生きる私たちは、先人たちの希望を思い出すことができるのだ。

憲法改正を提案するのであれば、その憲法条文にどんな希望を込めたいのか、明るく前向きに語るべきだ。強い希望が込められた条文であれば、将来の世代の人が、それを読み、私たちがどのような理想を持っていたか、思い起こすことができる。

参議院合区の解消であれば、人口の少ない県の住民がいかに困っているか、国の政治から見放されているかを説明し、合区を解消することにどんな希望があるのかを示すべきだ。維新の会も、教育無償化がいかに今の日本社会にとって大事なのか、もっと強いメッセージを出すことができるのではないか。

ところが、現在の憲法改正論議は、残念ながら、党利党略、占領軍への憎悪、細かな技術論に主導される傾向がある。それでは、国会内での広い合意も、国民投票での承認につながる世論形成も無理だろう。

こう考えてくると、憲法公布70年の節目に、もう一度、憲法を読み返し、そこに込められた「希望」を思い起こすことが重要なのではないか。

本当に辛い戦争の時代を生き抜いた先人たちが、日本国憲法にどんな希望を託したのか。それをしっかりと知ったうえで、それを超える理想像を描くことができたときにはじめて、私たちは今よりも素晴らしい日本国憲法を手にすることができるだろう。