バブルもびっくり!? 戦前昭和クリスマスの狂乱っぷりがスゴかった

軍靴の音もどこ吹く風…
堀井 憲一郎 プロフィール

1980年代よりも派手

1930年代前半には熱狂的にクリスマス騒ぎが広げられるが、後半になるとあっという間に捨てられる。この熱狂的狂乱クリスマスの記憶さえ捨てている。あまりにも冷淡な仕打ちと見える。

1980年代に熱狂的クリスマスと話題になったことがあるが、1930年代の熱狂ぶりはその比ではない。1930年代前半のほうがあきらかに派手である。

1929年の紙面からはカフェーのブームが感じられ、1930年の紙面からはウルトラなエログロの空気が伝わってくる。

1930年のキリスト教でのクリスマスも、やや狂奔的である。

「色とりどりな 国際Xマスの賑い」

「キリスト教青年会主催の恒例、国際クリスマスの集いは、おあつらえ向きにチラホラ雪の降り出した二十二日午後六時から神田のYMCA会館で催された。

定刻集まった人の数は二百名近く、これを人種別に見ると、英、仏、独はいうも更なり、露、支、印、フィンランド、ポーランド等々々、正しく国際クリスマスの名にそむかぬ華々しい集まり、おかげで食堂行きは二組に分けて、直に余興に移るといった盛況。

そのまた余興たるや、ハーモニカ、独唱、ヴイオリン、ピアノ等々本職連のが終わると、お婆さんからお嬢ちゃんまでもつとも親しい敵、味方に分かれていわく「イス取り」「風船玉の破裂」「嫁さがし」等々のゲームに打ち興じて笑い転げ、騒ぎつくして、まどらかな一夜を時の経つのも忘れて楽しんだ(写真は余興に夢中のところ)」

キリスト教青年会の集いではあるが、キリストも降誕も、旧約聖書も出てきていない。御当世ふうに浮かれ騒いでいる、という状況である。

ラジオではアメリカ、イギリスからの国際中継が始まった。

「舞ひこんで来た 英国議会ビッグ・ベン 十二の時声 手に取るような向こうのXマス気分 米国からの放送成功」

アメリカのジャズが続けさまに流れ、最後はロンドンのビッグベンの鐘も流された。「これでわざわざ海外に行く必要もなくなった」という街の声も紹介されている。

アメリカはまさにジャズの時代、日本にも大量のジャズが流れこんできていた。

「Xマス・イヴを踊り抜く」

1931年になると、もっと派手になってくる。

 

1931年12月13日日曜の「こどもペーヂ」はほぼ一面がクリスマス特集で、クリスマスやサンタクロースの由来や、海外のクリスマス風景、野口雨情の詩「クリスマス」、ロシアの伝説など、クリスマス関係の記事が満載され、80年を越えて見ていても、楽しい気分が伝わってくる。

1931年12月16日には家庭欄に「近づくクリスマス こうして祝いませう★本格的な祝い方の順序」という記事があり、祝い方を教えてくれている。教えてくれているのは駿河台のキリスト教青年会館の幹部の奥様方。クリスマスツリーの大きさから、贈物の贈り方、お昼のディナー(これはちょっとわからない概念なんだけど、お昼の御馳走ということなんでしょう)の内容などが紹介されている。

家庭にもきちんとクリスマスが定着しているのがわかる。

東京市主催のクリスマス会も毎年開かれている。この年も日比谷公会堂で開かれている。それが20日で、森永製菓のクリスマス会も日比谷公会堂で、これは25日。

1931年12月24日のラヂオ欄が紙面の半分が取られていて、とても大きい。局はNHK一局だけである(ただ東京以外にも、大阪、名古屋、仙台、札幌とあってそれぞれ少し内容は違う)。ラヂオ欄ながら写真もいくつも取り入れられ、クリスマスの講演に歌、お話などが紹介されている。大正天皇祭の講演も紹介されている。

1931年のクリスマスイヴの記事は「Xマス・イヴを踊り抜く」である。

1931年12月25日記事。

「ここはインターナショナル帝国ホテルのクリスマス・イヴ。きらきら光るツリーの下からジャズが流れて、踊る踊る、さすがの大ホールは溢れるばかり。

男女の群が御自慢のステップを踏む、赤や青の紙ゑぼしを道化師のそれのように被って狂喜するのが目につく、其の肩の間を縫ってグロテスクなサンタクロースが進む、卅一年クリスマスの光景だが、今年はどうしたことか外人が数える程しかいなかった」

大混雑のダンスホールの写真が載っている。女性は和装と洋装が入り交じっている。紙ゑぼし、つまり紙の烏帽子ですね、いまでも見かけるクリスマスのときにだけ出てくる紙の三角帽、とんがり帽子ですが、それをかぶっている男性もいっぱい写っている。

この帽子を被ると「私は全力でふざけているのだ」というサインになってわかりやすい。東急ハンズで買えるような近年の三角帽より、もっと頑丈できちんと作ってあるように見える。

暴漢汚物をまく

ただこの狂乱クリスマスをおもしろくないとおもってる人も実際にいた。