安倍政権はいま、解散総選挙についてこんなことを考えている

【永田町内幕リポート】
鈴木 哲夫 プロフィール

自民党の選挙力も低下気味?

こうした中で、自民党、民進党の現在の、いわば「選挙力」を検証してみる。

まず自民党。

「勝ったからといって日本国中で自民党が支持されているかどうか。これからも慎重に対応すべき」

10月23日、衆議院東京10区と福岡6区の二つの補欠選挙にともに勝利した自民党。選挙を仕切った二階幹事長は、本来なら二勝したことで胸を張ってもいいのだが、選挙後、謙虚で慎重な言い回しをしたのだった。なぜか。

「補選の少し前に行われた新潟県知事選挙で、自民党がとても無様な負け方をした。その敗因が二階幹事長のやり方にあると批判が出てきているからです。謙虚にならざるを得なかったのでしょう」(自民党幹部)

幹事長になってまずは国政選挙の初陣となった「東京・福岡の衆院補選」を引っ張った二階氏。「勝つためには何でもアリの変幻自在」(自民党中堅議員)で、その真骨頂を見せつけた。

「自民党内で分裂選挙になった福岡6区は、事前に公認を出さず勝ったら追加公認にするというウルトラC。両方の顔を立て、結果的に自民党議席は守るということになった。東京10区も知事選で小池百合子知事とともに自民党に反旗を翻した若狭勝氏が圧倒的人気があることから、『撃ち方やめ』と公認を出した。批判や異論があっても、ただただ勝つためには何でもやりきるという二階流は凄い」(同中堅議員)

ところが、これに先立って行われたのが、東京電力柏崎刈羽原発の再稼動が実質的な争点になった「新潟県知事選挙」。こちらの方は、二階流は裏目に出て負けるはずのない戦いに敗れた。

自民党は公明党とともに森民夫・前長岡市長を担ぎ、本来は敵方である連合新潟の支援も取り付けた。森氏圧勝と誰もが思ったが、告示直後から大接戦の展開となり、野党が支える米山隆一氏が劇的な勝利を収めた。二階氏は、接戦になると分かった選挙終盤にまさに「何でもアリ」の手を打ったのだが…。

「二階さんの奇策は、これまで新潟で原発再稼動に慎重な姿勢をみせ、政府与党と対立してきた泉田裕彦・前知事と安倍首相を会わせたことです。首相は泉田さんに『当然、力を借りることもある。よろしくお願いしたい』と選挙協力を依頼。

これを仕組んだのが二階さんでしたが、新潟ではこの露骨なやり方に無党派が反発し、自民党の中にも敵に抱きつくなど、やり過ぎだという声が上がりました。つまり、今回は二階さんの何でもアリの方法が裏目に出たのです」(新潟県自民党県議)

そしてこの選挙に敗れると、安倍首相の責任問題も浮上してしまった。首相は国会の質疑でも、新潟県知事選について答弁せざるを得なくなったのだ。首相側近の一人が言う。

「私たちは安倍首相と泉田氏が会うのは反対でした。なぜなら、選挙期間中に会って選挙に介入したら、負けた場合に首相の責任も問われるからです。首相も二階さんの頼みだからと、断りにくかったんじゃないか。それでも、原発問題も絡んだ危ない地方選挙に、首相を利用するのはやり過ぎ。官邸では『二階さんの選挙手法にも、今後は注意すべきところがある』という声が出ています」

また、自民党中堅幹部は、「これで新潟では、参院選に続き原発で連敗した。今後、同じように反原発を訴える知事がいる鹿児島などで、原発を軸に現政権への反対運動が連動する可能性も出てきた。二階さんは。新潟をもっと重要視して取り組むべきだった」と手厳しい。二階氏の選挙手法に疑問が持たれるなか、決して自民党も「盤石」というわけではないのだ。

またまた分裂気味の民進党

一方、蓮舫新代表率いる民進党の「選挙力」も怪しい。

「代表選挙で蓮舫さんに一票を投じたのは解散・総選挙を第一に考えたから。それなのに、新執行部はいったい何を考えているのかさっぱり分からない」

そうこぼすのは、落選中の元民進党衆議院議員。

【PHOTO】gettyimages

新体制になって行われた新潟県知事選、衆院東京10区と福岡5区の補欠選挙は、「いずれも執行部がとった対応は、それまでの野党共闘で積み上げてきたものを台無しにしてしまった」(同元議員)という。

新潟知事選では、民進党は野党統一候補には乗らずに自主投票を決めた。原発再稼動を支持する連合に気を遣い、他の野党3党と縁を切ったわけだ。また衆院補選については、執行部は「民進党の原点回帰」と位置づけ、なんと他の野党の推薦を断ってしまった。威勢だけはよかったが、当然のごとく全敗。元議員はため息交じりにこう話す。

「岡田克也代表や枝野幸男前幹事長が懸命に進めてきた野党共闘は、参院選の1人区でしっかりと成果を上げた。蓮舫代表や野田佳彦幹事長は表向きには、『野党共闘』と言いながら、共産党には一線を引いて、栄光の旧民主党時代に先祖帰りしようとしている。もはや民進党が単独で戦えないのは、支持率を見ても明らか。それも分からないのか。世論をも読めなくなっているのかと情けなくなってくる」(同元議員)
 
こうした中、民進党内部ではついに執行部を差し置いて、野党共闘へ向けて個別の動きを見せる議員が出てきたのである。