中国が尖閣諸島を占領する日 〜最悪のシナリオを公開する

突かれる日本の「法的不備」
渡部 悦和 プロフィール

中国は常套作戦としてPOSOWを遂行し、米国の決定的な介入を避けながら、目的を達成しようと考える。

準軍事組織による作戦の特徴は、①軍事組織である中国軍の直接攻撃はないが、中国軍は準軍事組織の背後に存在し、いつでも加勢できる状態にある。②非軍事組織または準軍事組織が作戦を実行する。例えば軍事訓練を受け、ある程度の武装をした漁民(海上民兵)と漁船、海警局の監視船などの準軍事組織が作戦を実施するのである。

この準軍事組織による作戦は、南シナ海──ベトナム、フィリピン、インドネシアに対して多用され、確実に成果を上げている作戦である。

尖閣諸島をPOSOWによって奪取しようとする場合、①200隻を超える漁船を尖閣諸島周辺に動員する。漁船には軍事訓練を受けた海上民兵が乗船している。

1隻に20~30人が乗船していると仮定すると、200隻だと4000~6000人となる。海上保安庁の監視船のみでこれに対応することが困難なのは、2014年に小笠原諸島周辺に集結した、200隻以上の赤サンゴ密漁中国漁船への対応を見ても明らかだ。

②中国の海警局の監視船が漁船の活動を容易にするために介入してくる。海上保安庁の監視船と中国の監視船のにらみ合いが続く。

③その隙をついて、漁船に乗船していた海上民兵が尖閣諸島に上陸し占領する。この間、中国海軍の艦艇は領海外から事態を見守る─以上が蓋然性の高い「準軍事組織による尖閣諸島奪取作戦」のシナリオである。

以上の推移で明らかなように、この作戦には軍事組織である中国海軍艦艇が直接的には参加しない。日本側から判断してこの事態は有事ではなく、平時における事態(日本政府の言うところのグレーゾーン事態)であり、海上自衛隊は手出しができない。

尖閣諸島に上陸した漁民を装った海上民兵を排除するためには大量の警察官などの派遣が必要となる。法的根拠なく自衛官を派遣することはできないからである。

中国の準軍事組織による作戦は、日米に対してきわめて効果的な作戦となるだろう。なんといっても日本の法的不備をついた作戦であり、自衛隊は手出しができない。

一方、米国にとっても準軍事組織による作戦に対して米軍が対応することはできない。つまり、こうしたケースの場合は米軍の助けを期待することができないため、これらの事態の対処は当事国の日本が単独であたらなければならない。

戦争が始まると、米軍は日本から兵器・部隊をいったん退避させる?
渡部 悦和(わたなべ・よしかず)
ハーバード大学アジアセンター・シニアフェロー、元・陸上自衛隊東部方面総監。1978年東京大学卒業、陸上自衛隊入隊。その後、外務省安全保障課出向、ドイツ連邦軍指揮幕僚大学留学、防衛研究所副所長、陸上幕僚監部装備部長、第2師団長、陸上幕僚副長を経て2011年に東部方面総監。2013年退職。本書が初の著作となる。