能年玲奈が「のん」になって得たものと失ったもの

「ザ芸能界 TVが映さない真実」第5回
田崎 健太 プロフィール

星野の見解はこうだ。

「実際の契約書では、レプロに属するのは『業務の遂行により制作されたもの』の権利であると定義されています。のんの作品は、レプロの指示で制作したものではありませんから、この定義には当てはまらない」

統一契約書は適宜改定されている。どのバージョンについて主張しているのか、契約書の細部の修正が行われていたのかは、両者に守秘義務があるため確認できなかった。

ちなみに、星野弁護士は、「三毛andカリントウ」の設立を事前に聞かされていなかったという。

「『レプロとの契約に違反している』という認識自体、のんは持っていなかったということです。(会社設立について)問題はないと判断しています」

これに関してレプロの担当者は、「契約違反だけでなく、信義則に反している」と主張する。

「契約書とは、お互い成功のために一生懸命やっていこう、と交わした約束です。その約束を破るのは、契約違反以上に罪が重い。無断で自分の個人事務所を作るというのは、約束を全く守る気がなかったわけですから」

一連の騒動の中で、もう一つ重大な法的問題がある。それは「能年玲奈」という名前の使用権だ。

週刊文春は〈本名「能年玲奈」を奪った前事務所の〝警告書〟〉('16年7月28日号)と題し、こう報じている。

〈「レプロは個人事務所の設立が発覚した昨年四月から、今年六月までの間に能年が面談に応じなかったせいで仕事を提供できなかったとして、その十五ヶ月間分の契約延長を求めるという文書を能年に送っています」(事情を知る芸能関係者)

それだけではない。その文書ではもう一つ、重要な申入れがあった。

「契約が終了したとしても、『能年玲奈』を芸名として使用する場合には、レプロの許可が必要だという内容でした」(同前)

能年玲奈は彼女の本名である。文書は、本名の「能年玲奈」をレプロの許可なしには使用できないとする〝警告書〟だったのだ〉

統一契約書の第23条には以下の条文がある。

〈乙(タレント)がこの契約の存続期間中に使用した芸名であって、この契約の存続期間中に命名されたものについての権利は引き続き甲(プロダクション)に帰属する。乙がその芸名をこの契約の終了後も引き続き使用する場合には、あらかじめ甲の書面による承諾を必要とする〉

週刊文春の報道について、レプロ側は事実関係と異なっていると言う。

 

「ここは明確にしたいのですが、『能年玲奈という名前を使わせない』と発言したことも、その種の文書を送ったことも一度もありません。

ただ、『契約書には〝能年玲奈〟という名前はレプロの許可なしで使えない、という条項も入っています。今後も芸能界で活動するつもりならば、たとえ独立したとしても、将来的に名前の問題が出てくる可能性もある。まずは話し合いが必要ではないですか』という趣旨の文書は送りました。

決して『名前を使うな』という警告書の類ではありません。しかし、彼女の側は交渉の場に出てこなかった」

統一契約書も、一律に「芸名」を所属事務所の所有物としているわけではない。前出の第23条はこうも定めている。

〈乙(タレント)がこの契約の存続期間中に使用した芸名であって、乙がこの契約の締結前から使用しているものについての権利の取り扱いは、甲乙間で別途協議して定める〉

つまり、本名である能年の名前は話し合いの上、使用できるのだ。