泉田裕彦・前新潟県知事が明かす「不出馬の真相」

ついに重い口を開いた
河野 正一郎 プロフィール

県民の間でも、知事選直前の新潟日報の報道に対し、「意図的な泉田おろしではないのか」という声が上がり、ネットでは「新潟日報は東電から広告をもらって東電の意向に添って『泉田おろし』を始めた」といった書き込みが相次いだ。

電通と原発報道』(亜紀書房)を著した元博報堂社員で、原発立地県の地方紙をチェックし続けている作家の本間龍氏によると、新潟日報には今年になって、15段全面広告2回、5段広告(紙面の下3分の1程度の広告)2回の東電広告が載ったといい、東電からの広告料は、公開されている料金表で計算すると約800万円とみられるという。

今年3月の株主総会で示された資料によれば、新潟日報社の2015年の純利益は約7億7千万円。2012年以降の純利益は7~9億円で推移している。本間氏はこう話す。

「東電から支払われた広告料が新潟日報社の経営を左右するものとは考えにくい。もっと巨額の広告費をもらっている地方紙もある。この程度の額なら東電の意向に添って『泉田おろし』報道をしたというのは、考えすぎだろう」

一方で本間氏はこうも指摘する。

「新潟日報は原発立地県の地方紙としては反原発の動きも書き込む公正な新聞だと思っていたから、一連のフェリー問題報道はかなり一方的な書き方で驚いた。執拗な『泉田おろし』報道に見えた」 

キーマンを直撃

なぜ、ここまで泉田氏と新潟日報の関係がこじれたのか。

知事周辺者によると、泉田氏が新潟日報社の小田敏三社長と最初に出会ったのは12年前、初当選した知事選の告示数日前のこと。新潟駅前の寿司屋で約2時間歓談したのちの別れ際、ほろ酔いの泉田氏に、当時編集局次長だった小田氏は「新潟日報はあなたを応援しませんから」と言ったという。泉田氏は親しい人に、その時のことを「一気に酔いが覚めた」と漏らしている。 

こう聞くだけでは訳のわからない話だが、ベテラン県議がこう解説してくれた。

「12年前の知事選では、自民と公明が、総務省の官僚(当時)と泉田氏のどちらを候補者にするかで調整作業をしていて、新潟日報は泉田氏とは別の人を推していたんだよ。結局は泉田氏が候補者になったんだけどね」

 

複数の新潟日報社の関係者からは、こんな話も聞いた。

2006年、岐阜県庁の裏金問題が発覚した。1992年度からの9年間にカラ出張などで計17億円の裏金を作り、官官接待などに使っていたというもので、当時の県庁幹部が費用を弁済した。

泉田氏は2003年から翌04年まで、経産省から岐阜県新産業労働局長に出向中で105万円の返納を求められたが、「裏金作りや使用に関与せず、赴任時に裏金は組合に移されていたので存在すら認識していない」などとして返納に応じなかった。

複数の関係者の話によれば、この一件を引き合いに出して、小田氏は、社内で多くの記者を前にこう言ったという。

「とんでもない人物が知事になっていた。辞めさせないといけない」

また、そもそも新潟日報がフェリー購入問題を連日報道した背景には、フェリー問題を統括していた森邦雄・前新潟県副知事(今年3月に退任)のリークがあったのではないかという見方が根強い。

実際、「週刊エコノミスト」(毎日新聞出版)は9月27日号で「泉田新潟知事が4選出馬撤回 不祥事“弾劾”に2人の森氏の影」との見出しで、今回の新潟県知事選の候補者となった森民夫・前長岡市長と並んで、前副知事の森邦雄氏に触れ、「新潟日報が泉田氏の責任を追及するのは報道機関として当然だ。ただ、キーマンとも言える森・前副知事の責任を問う報道はほとんどなかった」と意味深な書き方をしている。

私は知事選投開票日の翌10月17日朝、森(邦雄)氏を直撃した。