メジャーリーグの敏腕エージェントが教えてくれた「一流の気遣い」

ベースボールでビジネスがわかる⑧
長谷川 滋利 プロフィール

エージェントはアシスタント。その前提を忘れずに

実際に日本人選手に何人かエージェントを紹介したこともありますが、どの選手にも共通して「エージェントはあくまでアシスタントという意識を忘れないようにね」と必ず言います。契約は決してエージェント先行ではなく、選手は自分の意見は絶対に通さないといけない。あとから自分のキャリアを考えて「あそこで自分の意見をしっかり言えて良かったな」と振り返ることのできる野球人生を送ってほしいですからね。

 

なぜ僕がそんなことを言うのかといえば、これは日本人選手がらみだけではなく、アメリカではそういう傾向があるからです。エージェントの仕事があまりに評価と注目を集めすぎて、複数年やインセンティブ、大型契約ばかりに目がいってしまう。お金が動くのは悪いことではありませんが、決してトップ・プライオリティではない。いちばん大事な「選手がいいパフォーマンスをするための契約」という大前提が揺らいでるケースは少なくありません。

選手も球団もエージェントも、あるいはメディアも「史上最高額の契約」みたいなニュースばかりを追うと、野球がつまらなくなってしまう可能性すらありますから、球界全体で気をつけたい問題のひとつです。

ただ、最近はエージェントも増え、激しい競争も生まれ、前のような「偉そうだけど、こいつしかおらんからな」といういわゆる殿様商売は通用しなくなってきました。そのぶん、どこで差がつくかといえば、ちょっとした気づかいだったりします。これもどのビジネスにも共通して言えるかもしれません。

例えばオフに、ゴルフが好きな選手に名門クラブのチャリティコンペを用意してあげるとか、フットボールの大きなゲームがあるから、そこにゲストで入ってもらうとか、とにかく契約選手がどういうキャラクターか分析して理解して、気分良く過ごしてもらえるために手を尽くします。

逆に断りにくい地元のチャリティイベントとかをエージェントが断ってくれるのもありがたいですね。あとで主催者に会ってイヤミや皮肉を言われても「ああ、行きたかったけど知らなかった。エージェントは断ったけどまた呼んでほしい」みたいな言い訳ができますからね。

こういったようにエージェントというのは使い方次第で、ビジネス的にも優位に立てるし生活環境も向上させることのできるメジャーのキーマンです。

これはあくまで僕の意見ですが、野球選手も「野球だけやって、契約はエージェントに任せよう」という時代はもう過去で、選手も最低限の知識を持ってビジネスマンになるべき時代がやってきているのかもしれません。