「黒田博樹vs.大谷翔平」永久に記憶しておきたい3打席全8球

背番号15とともに
上田 哲之 プロフィール

非常に残念なのは試合後、ジャクソンが「こういう結果になってしまって、みんなに謝罪したい」とコメントしたことだ。

6連投のジャクソンに非はまったくない。今年のカープの優勝を支えたのは、ジャクソンの8回だと言っても過言ではない。最後の最後に疲れからスライダーのキレが失われただけのことだ。あくまでも、選手にこのようなコメントを出させてしまった采配の問題である。

 

栗山監督は第6戦で大谷を使う気は、全然なかったと言っている。二刀流の疲れを考慮した、戦略上の判断だそうだ。

きっとそうなのでしょう。二刀流の疲労度など私などに想像できるわけがない。ただ、せっかく温存してくれたのだから、第7戦の黒田対大谷を見たかった、と繰り言のように思う。

サプライズビデオに見る心配り

カープがクライマックスシリーズ(CS)で横浜DeNAと戦う日、黒田がサプライズで用意したビデオを選手全員が見て、士気を高めたのだという。キャンプから優勝に至る今季の軌跡が編集してあったそうだ。DeNAにすんなり勝てたのは、黒田ビデオの効果も大きかったに違いない。

さすがヤンキースの元エースはやることが違う。ただ注目したいのは、このビデオの音楽担当に黒田がヘーゲンズとジャクソンを指名したことだ。

日本シリーズでは、7回今村、8回ジャクソン、9回中崎翔太という、いわゆる勝利の方程式にこだわりすぎた緒方采配が、大きな敗因となった(第6戦のジャクソンの続投もそのひとつ)。

つけ加えれば、CSから日本シリーズにかけて、ヘーゲンズの登板が極端に少なかったのも、失敗だったと思う。もともと前半戦の勝利の方程式は「ヘーゲンズ→ジャクソン→中崎」だったのだ。ヘーゲンズが7回を抑えることで、前半戦の首位固めができた。黒田の指名した2人の音楽担当には、おそらくはそれを称揚する彼の心配りがこめられている。

10月25日、黒田が大谷に投げた8球には、デビューからメジャー時代、そして広島復帰と、彼が刻んできた経験のすべてが込められていた。

背番号15とともに、その8球も、永久に記憶しておきたい。

上田哲之(うえだ・てつゆき)
1955年、広島に生まれる。5歳のとき、広島市民球場で見た興津立雄のバッティングフォームに感動して以来の野球ファン。石神井ベースボールクラブ会長兼投手。現在は書籍編集者。