日本を動かしてきた「電通」の正体~「過労死問題」は落日の始まりなのか

当事者たちが明かす生々しい「実像」
週刊現代 プロフィール

虚像が崩れ落ちる日

まず、元電通社員でスポーツ総合研究所所長の広瀬一郎氏が言う。

「かつての電通ではリスクを恐れない破天荒な社員がたくさんいて、会社としても彼らが好き勝手に動くのを許容しながら、時にとてつもない大きな仕事を手に入れてきた。しかし、'01年に上場してからこの風土が大きく変わり、なにより失敗が許されなくなって、小粒な仕事が増えてきた。電通マンたちも普通のサラリーマン化して、電通の『得体のしれない恐ろしさ』が消えていった」

 

時を同じくして、電通の「稼ぎ場」であるテレビが視聴者から飽きられるようになって、テレビ広告市場も縮小。電通が'09年3月期決算で106年ぶりの最終赤字に落ちる中、追い打ちをかけるようにインターネット市場が急激に膨張して猛威を振るい出した。

「電通はいまだテレビ広告依存型のビジネスモデルで、ネット市場では後手に回っています。ネット市場が拡大していることを聞いた当時の社長が、『買い切れ』と言ったという話が語り草になっているくらい、旧来の成功体験から脱し切れていない」(前出・藤沢氏)

そうして本業がじり貧になる中、コンプライアンスを逸脱した労働問題が噴出してきたのはある意味で象徴的といえる。今秋には電通が手掛けるネット広告で不正を働いていたことも発覚した。元博報堂社員でネットニュース編集者の中川淳一郎氏は言う。

「そもそも、これまで電通に関しては虚実ない交ぜの伝説が様々に語られ、隠然たる力を持ったモンスターのようなイメージが作られてきました。電通としてもそれらをいちいち否定せず、むしろ放置してきたのは、そのほうが都合がよかったからでしょう。クライアントは勝手に電通を頼ってくるし、メディアも勝手に萎縮する。しかし、いまやその虚像は崩れようとしています。

気付いた人たちが電通をこれまでのように恐れなくなり、今回の過労自殺問題ではメディアが電通を批判するようになった。こうした神通力はもはや通用しなくなってきたのです」

落日はもう始まっている。これが電通の偽りのない「正体」なのである。

「週刊現代」2016年11月12日号より