日本を動かしてきた「電通」の正体~「過労死問題」は落日の始まりなのか

当事者たちが明かす生々しい「実像」
週刊現代 プロフィール

テレビは電通と喧嘩できない

電通はいま、かつてない異変に直面している。その実態については後で詳述するが、その前に電通がこれまでどれほど絶大な権力を誇示してきたのかを、当事者たちの証言から明らかにしよう。

 

電通とメディアの関係について、前出の藤沢氏が「体験談」を明かす。

「たとえばクライアント企業の不祥事についてメディアが報じようとしているという情報を察知した際、これをもみ消しに動くということがありました。クライアントからは『口止め料』として追加の出稿をもらい、これをエサにしてメディアには記事の修正などをお願いするわけです。

実際、メディアに『今後半年の出稿を約束する』と言って、記事が差し替わったことがありました」

中でも、電通が強い影響力を持つのはテレビ。新聞や雑誌と違い、テレビ番組は広告料金だけで稼ぐビジネスモデルで、そのスポンサー集めを電通に大きく「依存」しているためだ。

石井社長は営業局出身〔PHOTO〕gettyimages

たとえば、テレビ朝日が『ニュースステーション』を始める際に、電通がCM枠の半分を買い切ったのは有名な話。そもそも、テレビの視聴率を調査する唯一の会社であるビデオリサーチ自体、電通が主導して作ったもので、電通が約34%の株を保有している。

元博報堂社員で著述家の本間龍氏も言う。

「結局、テレビ局はスポンサーの意向に反する番組は作れないし、そのスポンサーを集めてくれる電通とも絶対に喧嘩はできない。番組の企画会議にはスポンサー代理として広告代理店社員が出席することがありますが、彼らから『この内容ではスポンサーが納得しない』と言われれば、企画は通らない。

実際、私があるローカル局を担当していた際、その幹部は『電通のことを気にせざるを得ない』と漏らしていた」

このような電通のメディア支配を最も象徴するのが、原発報道だろう。

かつて原発報道によって電通の圧力を経験したジャーナリストの田原総一朗氏が、その実体験を明かす。

「私がテレビ東京に勤めていた時、原子力船『むつ』の放射能漏れ事件が起きました。私はこのときに原発問題を取材したのですが、当時原発を推進する市民運動の裏に電通がいることがわかったので、そのことを雑誌に書きました。

すると、電通がテレビ東京に抗議をしてきたのです。会社は私に執筆を止めるか会社を辞めるかと言ってきたので、私は会社を辞める羽目になった」