ヒラリーが抱える「もう一つの選挙戦」真の勝敗は連邦議会選で決まる

エレクション・デイ直前レポート
渡辺 将人 プロフィール

ルビオは上院議席を放棄して大統領選挙に出る宣言をしていた。その「背水の陣」の決意を評価してほしいという選挙戦を展開し、敗北したら「民間人」になるはずだった。

しかし、「上院議員引退」宣言を突如撤回。再選を目指すことになった。

地元の後援会筋は大歓迎だ。もともと、ルビオが大統領に興味を示してせっかくの上院議席を放棄する態度に、支持者らは裏切られたと落胆していたからだ。

再選回数が議会での権力への道であり、地元への利益誘導もそれで決まる。ルビオの若さに「永久再選」の利益をあてこんでいた支持層は、ルビオ復活を応援している。

だが、ルビオは2020年の大統領選挙出馬を疑われている。対抗馬の民主党候補パトリック・マーフィー陣営は「どうせまたルビオは上院の職を放り出すのだろう」と攻撃してきた。それを受け、ルビオは「神の思し召しで、6年の任期を全うする」と約束した。だが、大統領選挙への出馬については明言を避けている。

「どうせ2020年直前になればルビオは、神の思し召しで、上院議席半ばで大統領に挑戦する、とでも言うに違いない」とフロリダ州民主党関係者は手厳しい。たしかに「神の思し召し」は便利なエクスキューズだ。

共和党のトランプ指名も、ルビオ再出馬のエクスキューズになった。ルビオは「私が考えを変えて再選を目指しているのは、(ヒラリーとトランプ)どっちが大統領になっても議会上院で大統領と戦う必要があるからだ」と述べている。

 

ジェブとルビオの休戦

「トランプ要因」はジェブとルビオの休戦原因にもなった。ルビオはフロリダ州を地盤にしながら、元フロリダ州知事のジェブの支援者との暗黙の約束を破って2016年予備選に出馬し、ジェブの面子を潰した経緯がある。

腹を立てたジェブも「上院でルビオは何の成果も残していない」とかつての「弟子」を攻撃。ジェブは撤退後もルビオを支持せず静かに妨害した。フロリダでジェブの組織がまったく動かず、ルビオはトランプに敗北する。

だが、頭を冷やしたジェブは、「ルビオの反乱」ではなく、「トランプ旋風」こそ伝統的共和党にとって真の危機と再認識する。「トランプに投票しない」と今年5月に明言。ブッシュ家は今年の共和党全国大会をボイコットした。共和党主流派が将来的に「トランプ旋風」を封じ込めるには、主流派若手の星ルビオがやはり必要と、ルビオの上院再選支持に転じた。

11月1日時点での世論調査平均では、ルビオと民主党対抗馬は49.2対44.8で、ルビオが4.4ポイントほどリードしている。ルビオは2017年1月に議員バッジを外す予定だったのに、奇跡の復活を遂げつつある

共和党大統領候補への「党内反発」が、共和党上院選での「支援連合」を活性化させるという不思議な展開も、いかにも異例尽くしの選挙年を象徴している。

11月8日(現地)の投票日は、大統領選挙の勝敗以外に、連邦議会選挙で民主党が上院で多数派を握れるか、下院の議席がどの程度縮まるかも注目点である。

トランプ候補の登場で、ますます亀裂を深める超大国は、どこへ向かうのか。元インサイダーとして、大統領選挙の実情を知り尽くしている著者が、アメリカの「リベラル政治」の複雑で厄介な構造を読み解き、新政権の課題を占う。