ヒラリーが抱える「もう一つの選挙戦」真の勝敗は連邦議会選で決まる

エレクション・デイ直前レポート
渡辺 将人 プロフィール

ヒラリーはただでさえ第二次大戦後初の民主党3期目を目指している。再選のハードルは高い。無党派層の有権者心理的に、特定政党の長期化を望まない振り子の作用もあるからだ。相当な快進撃で大成果を1期目に残す必要がある。

だが、議会を共和党に握られたままでは難しい。最高裁判事の指名にも上院の承認が要る。

トランプの巻き添えは勘弁してほしい

2つめは、大統領選挙の投票率への影響だ。

トランプの女性問題の勃発以降、共和党主流派のトランプ離れが雪崩を打ったかに見える。なるほど、ジョン・マケイン上院議員、ポール・ライアン下院議長など、トランプに厳しい発言で事実上の決別をしている。しかし、彼らがトランプに距離をとるのは、自分が再選年だったり、議席数に責任をもつ議会指導部であったりという事情が絡んでいる。

トランプ政権は共和党議会指導部としても制御不能かつ予測不可能だ。それよりは、共和党議会多数派の維持のほうが、共和党の主流派の望む保守政治継続の確実な道でもある。

今回の連邦上院選挙は民主党に追い風だ。2010年のティーパーティ旋風で「棚ぼた」当選した議員の再選年が、今年2016年に集中しているからだ。

改選議席は民主の10に対し、共和は24。トランプ勝利でも、民主党は上院で5議席勝利すれば多数派の地位を奪還できる。ヒラリー勝利の場合は、副大統領が議長として1議席に含まれるので、さらに少ない4議席でよい。

11月1日時点の「リアル・クリア・ポリティクス」世論調査平均の予想では、共和党は落選確実が1議席、当落線上が7議席もあるのに対して、民主党は落選確実が0で、当落線上も1議席だけだ。

トランプに対する好悪が共和党内で割れていることは、議会選挙の結果予測を複雑にさせている。通常、中間選挙は地元議員を支持する党派的な有権者しか参加しないので投票率が低いのに対して、大統領選挙は議会選挙の票を活性化する。

しかし、今回はトランプを好まない共和党有権者が「棄権」を選択し、それが議会選挙に悪影響を与える可能性も皆無ではない。

予備選挙では共和党参加者が民主党を上回っていた。その点だけを切り取れば、共和党の本選投票率は高くなるかに思える。

しかし、熱心なトランプ支持者の多くは、初めて予備選に参加した無党派層だ。彼らは反移民、保護貿易主義などでトランプ個人を好いている。大統領選挙の投票率を底上げしてくれるが、共和党には関心がなく、議会選挙を左右する献金や動員など草の根活動にも興味を示さない問題がある。

主流派の票の行方も見えない。女性問題でトランプに嫌悪感を感じている郊外女性や穏健派を失えば、議会選挙の共和党候補が巻き添えをくらう。地盤の弱い共和党議員から順に、トランプ支持を取り下げているのはそのためだ。

 

ルビオ復活

3つめは、2020年大統領選挙の前哨戦としての意味だ。

上院選は大統領選の陰に隠れがちだが、将来の大統領候補の台頭の現場でもある。2000年のニューヨーク州の連邦上院選ではヒラリー・クリントンが勝利した。2004年全国党大会では、イリノイ州から連邦上院選に出馬中だったバラク・オバマが「1つのアメリカ」演説を披露した。

今年の注目選挙の1つはフロリダ州。大統領選挙で敗退したマルコ・ルビオの再選選挙だ。

「神の思し召し」で上院議員引退宣言を撤回、再選を目指すルビオ候補〔PHOTO〕gettyimages

筆者は2015年夏から2016年大統領選挙の各陣営の現地調査を本格化させ、気がつけば民主、共和ほぼすべての候補者集会で演説に参加してきたため、各陣営に登録したメールアドレスに陣営広報メールが送信されてくる。その推移と量を並べると興味深いが、ダントツで多いのはルビオ陣営だ。10月末からは1日、5〜6通以上のペースだ。

大統領選挙の激戦州なのに、メールにはトランプの「T」の字もない。「ルビオを救ってくれ」「上院多数派維持はフロリダにかかっている」の説得攻勢だ。