タワーマンション住民を苦しめる「階数格差」というシビアな現実

購入者は「見栄っ張り」が多い!?
榊 淳司 プロフィール

実際、その傾向は強いと感じる。ドラマ「砂の塔」では、最上階に住む企画会社を経営する社長の妻が「ボスママ」という設定。いわゆる幼稚園の「ママ友グループ」に君臨し、主人公の菅野美穂を「これでもか」といじめまくる。

さらに、ボスママに隷従する上層階グループのママたちが、下層階に住むママ友を蔑む。まあ、ドラマの設定としてはよくできていて、構図も非常に分かりやすい。

実際にそういうことがあり得るのか、と質問された場合、私は「十分あり得ますから、気を付けてください。まあ、本人が気にするかどうかということもありますけれど」とお答えしている。

子どもが中学生や高校生に成長すれば、やがてママたちのご近所づきあいはほとんどなくなるから、エントランスで会ってもせいぜい挨拶を交わすくらいで済むだろう。

しかし、まだ毎日の送り迎えや親の協力が求められる行事の多い幼稚園ママたちは、好むと好まざるとにかかわらず、交流せざるを得ない関係を強いられる。

実際にそうした状況を傍証する調査結果もある。明治大学住環境研究会が公表した「豊洲タワーマンションアンケート調査結果」(2010年1月)である。「マンション内で付き合っている人がいる」と答えた人の割合は、20~30代で約45%。40代以上を大きく引き離している。

そういった環境の中で子どもや自分がいじめられたママの何人かは、ブログでそのことを赤裸々に語っていたりする。「砂の塔」を観ていても、「このエピソードの出所は、あのブログかもしれない」と思えるような場面が何ヵ所かあった。

 

階数は「成功の証」

ドラマの舞台が江東区の湾岸エリアっぽいというのも、制作側のなにがしかの「意図」を感じる。実のところ、豊洲や有明といった江東区の湾岸エリアのタワーマンション購入者には、階数ヒエラルキーを意識しやすい人々が多く含まれていそうだ。

まず、彼らには地方出身者が多い。

「渋谷で生まれ育った」「小中学校は地元の杉並区立」などといった、親の代から都心に近い場所に住んでいる人が、一流企業に勤務するサラリーマンとして高収入を得たり、あるいは起業して富裕層になったからといって、そうした人の多くが豊洲や有明のタワーマンションの購入を熱望しているとは思えない。むしろ、「東京生まれの東京育ち」の人々の間で、タワーマンションに憧れる人は少ないのではないか。

現に、先の「豊洲タワーマンションアンケート調査結果」によると、夫(妻)の出身地(中学卒業時の居住地)が東京であると回答した人は、いずれも20%程度に過ぎない(ちなみに、埼玉・千葉・神奈川を含む一都三県に広げても、その割合は50%に満たない)。

つまり、タワーマンション住民の多くが東京以外の地方出身者というわけだ。

私の知る限りでも、湾岸のタワーマンション住民の多くは、ITベンチャーや金融、不動産系の新興企業に勤める高年収層で、たいていが地方出身者だ。つまり学生か社会人になるときに東京に移住してきた人々。

そんな彼らが自らの「成功の証」として選ぶのが、湾岸のタワーマンションなのだろう。彼らの購入した住戸の「階数」とは、成功の証を数値化したものでもある。逆に言えば、それを超える階の住戸を「買えなかった」という事実も、彼らは強く心に受け止めているはずだ。

それだけに、「階数ヒエラルキー」を発生させたり、受け入れる心理的な土壌を持っているとも言えるだろう。

最近、『マンション格差』(講談社現代新書)という著書を世に送り出した。マンションの資産価値の格差がどのような仕掛けで生まれ、拡大するのかを分かりやすく解説したつもりだ。その中で1章を割いて「タワーマンションの階数ヒエラルキー」について論じているほか、大手デベロッパーの“言ってはいけない”特徴などにも言及している。ご興味のある方はぜひお読みいただきたい。