激変する音楽ビジネス、なぜ日本は「世界的潮流」に乗り遅れたのか?

音楽の未来、ヒットの未来
柴 那典 プロフィール

変化を厭い「ガラパゴス化」していた

しかし、潮流は変わりつつある。

2016年9月、スポティファイがようやく日本上陸を果たしたことが大きな契機になるはずだ。

2012年に日本法人を設立したスポティファイが長らく日本でのサービスを開始できなかった理由は、「フリーミアム」と言われる仕組みに原因があった。広告つきの無料版でお金を払わない利用者にも楽曲を配信してサービスに親しんでもらい、有料会員からの収入と広告収入で利益を得るビジネスモデルだ。

それに音楽業界が抵抗した。スポティファイも国内レコード会社の出身者を雇い入れて水面下で交渉を続けてきたが、一部のレコード会社が無料配信に強く反発し、日本での事業開始までに時間を要した。

しかし、世界全体の音楽市場のあり方を見ても、ストリーミング配信サービスは必然的な進化の形と言える。それによってリスナーはより豊かな音楽体験が可能になり、アーティストにはその収益が還元されるようになる。

 

実際、スポティファイはその利便性で、各国で違法ダウンロードを減少させた実績がある。無料で聴き放題の使いやすいストリーミングサービスがあれば、わざわざ違法ダウンロードをする必要がなくなるからだ。実際、ほとんどのアーティストが楽曲の配信を許諾している。

2015年2月、IFPIは同年7月から世界全体で新作のリリース日を毎週金曜日に統一することを発表した。その背景には、デジタル化が進み、ストリーミング配信サービスが普及したことで、グローバルな規模で音楽が一気に広がるようになったことがある。各国でリリース日が違うことによって生じる海賊行為を防止する狙いだ。

一方、日本のシングルやアルバムのリリース日は水曜日がほとんどだ。その理由は、それによってオリコンチャートの集計期間に有利になり、初登場のランキングを少しでも上げることが可能になるからだ、と言われる。いまだに「CDを売ってナンボ」の、国内市場しか相手にしない発想が生き残っている。

IFPIのフランセス・ムーアは「変化を受け入れなければいけない」と語った。

しかし世界第2位の音楽市場を持つ日本では、レコード会社の一部は、CD中心の市場を何年も維持することを望み続けてきたように見える。内需が強く、変化を厭う。そのことが音楽産業の停滞感や閉塞感に結びついていた。

音楽の中身の「ガラパゴス化」は、それが独自な進化につながるなら歓迎すべきだというのが筆者の立場だ。

しかし音楽の聴かれ方や仕組み、業界の「ガラパゴス化」は、リスナーの日常生活から音楽を遠ざけ、結果として音楽シーンの健全な発展を阻害していると言えるのではないだろうか。

(つづきはこちら「音楽を『売らない』新世代のスター!? 最先端の「メガヒットの法則」とは」)