急成長するフリマアプリが、日本経済に革命をもたらすかもしれない

スティグリッツ教授も指摘
加谷 珪一 プロフィール

フリマ市場が発達するとGDPが縮小する?

こうしたフリマ・アプリの台頭は、経済の仕組みにも大きな影響を及ぼすと考えられている。環境省の調査によると2015年度における国内の中古市場は3兆1000億円あり、規模の大きい自動車などを除いてもすでに1兆1000億円の規模に達しているという。

今のところフリマアプリが占める割合は大きくないが、メルカリの月間取扱高はすでに100億円を超えている。各事業者が本格的にサービスを拡大することになれば、中古売買市場は今後、急激に成長してくることになるだろう。そうなってくるとマクロ経済的には、少々やっかいな事態となる。

GDP(国内総生産)の定義上、中古品の売買は新たに付加価値を創造したわけではないので、GDPにはカウントされないからである。

売買を仲介した際の手数料は、新しい付加価値なのでGDPにカウントされるが、商品そのものは所有権の移転にしかならない。中古市場が拡大することになると、実際のモノとお金の流れに対してGDPの数字が乖離してくる可能性は否定できないだろう。

それだけではない、長期的にはマクロ経済そのものの仕組みが変革を迫られることになるかもしれない。古品市場の拡大に伴ってマクロ的な設備投資が抑制される可能性が出てくるというのがその理由である。

これまでは製造されたモノの多くは再利用されず捨てられることが大前提であった。商品を大量生産して大量廃棄することが当たり前であり、そのための設備投資が経済を支えていたのである。

しかし、シェアリング・エコノミーの発達によってモノの再利用が最適化されると、実際に世の中に必要な数のモノさえ生産されれば、それで十分ということになる。

同じ経済を維持するために必要となる設備投資の金額が小さくなり、経済がシュリンクするリスクがあるのだ。日本のGDPにおける設備投資の割合は2割ほどあるが、設備投資の動きはGDPの成長率を大きく左右するという現実を考えると影響は大きい。

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経済を活性化させる中古市場

これについては経済学の世界でも徐々に議論され始めている。リベラル系の経済学者で、安倍首相に消費増税の延期を提言したことでも知られるジョセフ・スティグリッツ教授は、来日時に興味深い指摘を行った。新しい経済構造においては、以前ほど資本集約的ではなくなり、社会全体で必要な投資額は減少する可能性があるというのだ。これはシェアリング・エコノミーのことを指していると考えられる。

このところ全世界的に低金利が続いているが、これは世界経済の先行きに対する不透明感が主な要因といわれる。だが、もしかすると一連の市場の動きは、シェアリング・エコノミーの到来によって、設備投資があまり増えないことを徐々に織り込み始めているのかもしれないのだ。

 

もしその動きがホンモノであれば、経済政策そのものについても再考が必要となってくるだろう。

こうした状況を前に、一部の専門家は顔を曇らせているが、筆者はシェアリング・エコノミーの台頭についてまったく悲観視していない。中古市場の拡大によって経済に余力が生まれ、これが新しい需要の創造や、供給(製品やサービス)拡大につながると考えているからである。

そもそも日本は、先進諸外国と比べて中古市場が脆弱である。例えば日本の中古車市場の相対的な規模は米国の6分の1以下しかない。中古住宅も同様で、日本では住宅流通量に占める中古住宅の割合は10%台だが、米国や欧州では流通する住宅の7割から9割が中古である。

では欧州や米国の住宅関連市場は縮小する一方なのだろうか。むしろその逆である。中古市場が活性化していることで、住宅の資産価値が維持され、金融システムの維持・拡大に寄与している。

また消費者が住宅そのものにかけるコストが安く済み、その分、断熱やインテリアなど、住宅の質を高める産業分野にたくさんのお金が回っている。結果的に経済全体を活性化しているのだ。

シェアリング・エコノミーの台頭で一時はマイナスの影響もあるかもしれないが、それによって生まれた余力は、必ず新しい消費や投資を生むはずだ。フリマアプリの台頭は前向きに捉えたい。

加谷珪一(かや・けいいち)
経済評論家。1969年宮城県仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に「ポスト・アベノミクス時代の新しいお金の増やし方」(ビジネス社)、「新富裕層の研究-日本経済を変えるあらたな仕組み」(祥伝社新書)、「お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか」(朝日新聞出版)、「お金持ちの教科書」(CCCメディアハウス)、「教養として身につけたい戦争と経済の本質」(総合法令出版)などがある。