フジテレビだけ置いてきぼり?テレビドラマから「恋愛」が消える日

なぜミステリー、職業モノばかりなのか
週刊現代 プロフィール

歴史や実話をもとにしたNHKの大河ドラマや朝ドラ『べっぴんさん』も含め、今クールで視聴率10%以上を獲得し、視聴者から高評価を得ているテレビドラマはいずれも「恋愛」をメインにした作品ではない。

石原さとみが主演する日本テレビの『校閲ガール』は、出版社の校閲者という「言葉のプロフェッショナル」を主役にした職業ドラマである。

TBSの『逃げるは恥だが役に立つ』は、若者に人気がある新垣結衣と星野源が出演する男女の物語だが、いわゆる「恋愛ドラマ」ではない。

新垣が演じるのは、文系の大学院で学んだものの就職先が見つからない求職中の女性。彼女は生活していくために、家事代行業の仕事先で知り合った会社員の男性(星野)と「契約結婚」(事実婚で性的な関係はなく、女性は給料をもらって家事を担当)する……というストーリーだ。

元毎日放送プロデューサーで同志社女子大学教授の影山貴彦氏はこう解説する。

「このドラマは社会的な問題に一石を投じています。大学院生が仕事で報われない社会システム、特に女性に対しては厳しいままだという裏テーマがあるんです。主人公は社会の不条理さに怒りながらも、置かれた立場で花を咲かそうとする。

非現実的な設定なようで、一皮むくと、そこに厳しい現実が描かれています。中高年の鑑賞にも十二分に堪えうるドラマです」

『校閲ガール』や『逃げるは恥だが役に立つ』は、「地に足をつけて真面目に働く女性」の物語なのである。それは『半沢直樹』や『下町ロケット』と同じテイストなのだ。

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月9は一昔前のメロドラマ

一方で、フジテレビの看板「月9ドラマ」だけが、いまだにピントが外れている。元テレビプロデューサーで上智大学教授(メディア論)の碓井広義氏が語る。

「見た目のいい男女が、すれ違いながら、最後は結ばれる。そんなバブル期の恋愛ドラマの作り方を引きずっているんです。いくら目先を変えても、若い視聴者からは『私たちだって恋愛のことばかり考えているわけじゃない』と、そっぽを向かれてしまっている。

人生経験豊富な40~50代の女性も『月9みたいな恋愛ドラマはもう見たくない』と飽きてしまっています。そんな状態が、ここ何年も続いています」

 

今クールの月9『カインとアベル』も初回視聴率8・8%と低迷しているが、それも当然だろう。主演はジャニーズの人気アイドル・山田涼介で、大手不動産会社社長の次男である主人公を演じる。副社長を務める優秀な兄との葛藤のなか、兄の恋人と三角関係に陥る……まるで一昔前のメロドラマである。

ドラマ評論家の黒田昭彦氏が語る。

「恋愛ドラマが数字を取れなくなってきた決定的な分岐点は、やはり'11年3月の東日本大震災です。そのため'12年の月9は、『嵐』の松本潤や大野智を主演に起用しても恋愛モノにはしなかった。

フジだって現場は薄々分かっていたんですが、過去の栄光を忘れられない上層部が『月9は恋愛ドラマだ』と言い出して、恋愛ドラマに回帰してしまったのでしょう」

かつてトレンディドラマをプロデュースしていた大多亮氏や亀山千広氏が、'12~'13年からそれぞれ常務、社長に就任し、明らかに迷走が始まった。

昨年11月の定例会見で、亀山氏は、月9についてこう語っている。

「今まで押し出してきたワクワク感だったり、ドキドキ感だったり、少し浮き世離れしたお祭り感がどこかで絵空事に見えてしまうようになったのかなと思います」

フジの若手社員はタメ息まじりにこう明かす。

「分かっているなら、なぜ変えないのか……。上層部は'90~'00年代前半に大手芸能事務所にお世話になった恩義があります。そのためキャスティングにしがらみが残っていて、いまだに大手事務所が売り出し中の若い俳優を起用する必要があるんです。

すると恋愛モノを作るしかなくなる。ギリギリの人間性を表現する本格ミステリーや社会派の作品にはベテランの演技力がいりますからね」