「塩:適量」って何グラム? 料理の“勘どころ”、全部数字に直しました

「おいしくない」には理由がある

「今日はおいしくできた」から、「いつもおいしくできる!」へ。

しょっぱすぎた、火が通ってない、味がしない・・・・・・和食を難しくしている塩かげん、火かげん、調理時間。NHKワールドで和食番組のホストを務める料理家行正り香さんが、おいしさにこだわって和食をルール化した『レシピのいらない和食の本』

レシピが覚えられないという人でも、なんとなく作っているという人でも、この簡単なルールで毎回おいしい和食が作れるようになるはずだ。

ルールはおいしさへの最速の乗り物

和食のレシピを見てみると、「適量」「適宜」「適当」――そんな表記が多いことに気づく。毎日和食を作っているならともかく、作り慣れない人にとってはこの表現、実はかなりやっかいだ。その「適当」なさじかげんで、塩がきつかったり生焼けだったり、と味が一定しない原因となる。

「この“勘どころ”を数式にできないか、と思ったのがルールを作った理由」と語る行正り香さん。海外の視聴者を対象としたテレビ番組で和食を紹介している行正さんにとって、誰もが味を再現できる方法は必須だった。

「数学に公式があるように、英語に英文法の授業があるように、こうしたルールはミニマムな力である一定のレベルまで連れていってくれる“最速の乗り物”なんです」

「適当」料理は、このルールを自分のものにしてから始まる。

 

おにぎりにだってルールがある

たとえば、おにぎり。材料は塩と米。まさに「適当」に塩をつけて「適当」な量のごはんを握っている人が多いのではないだろうか。

「おにぎりの塩の分量なんて必要ないと思うでしょう? でも、確実においしいおにぎりを作るためにはこの単純な数式を覚えてほしい。ベストな味のおにぎりがいつもできますから」

その数式とは、「ごはん110g+塩1g」。

110gとは、ごはんが手のひらにこんもりとのる量で、小さめの茶碗(子ども用など)で1杯分。塩1gとは小さじ1/5のことだが、いちいち測る必要はなく、3本の指先を軽くぬらして塩をつけ、手のひらにのばす―――これを両手におこない(2回)、1gの塩となる。この手でごはんを握ればちょうどいい塩けがごはんに加わる。

「少し塩が多いと思うかもしれませんが、このくらいの塩けを感じるほうが米のおいしさが引き立つんです」

おにぎりは「100gで1g」Photo by 川上輝明

「から揚げ=オール1」「肉じゃが=7:1:1:1」

老若男女、誰もに人気のから揚げ。卵を使ったりしょうゆに漬け込んだり、いろいろな作り方があるが、行正さんが考えたのは漬け込む手間がいらない、サクサクに仕上がるレシピ。

鶏もも肉1枚(約300g)なら、6等分にして「ナンプラー大さじ1、酒大さじ1、おろししょうが大さじ1、おろしにんにく小さじ1」のオール1で味をつけるだけでOK。時間をおく必要はなく、あとは片栗粉をまぶして揚げれば完成。

この「オール1から揚げだれ」は鶏肉だけでなく、豚肉、牛肉、ラム肉、レバーや軟骨、砂肝などの内臓類でも応用できる。たれをさっともみ込むだけできちんと味がつくので、漬け込む時間を間違えて味が濃すぎたり薄すぎたりという失敗もない。

ちなみに、このから揚げをサクッと揚げるには、①すぐ揚げる ②170度の中温で6~7分 というのがポイント。食材を小さく切ったときや牛肉やラム肉のようにレア感を残したいものは、この時間より短めに。

から揚げは「オール1」でサクサク Photo by 川上輝明

いまでも家庭料理と言えば、という不動の地位を守っているのが肉じゃがだ。ご飯の進むしっかり味がついていながら、どこかほっとする味わいのルールは、「7:1:1:1」。

肉類の煮物は肉から旨みが出るので、だしを使う必要はない。「水7:砂糖1:みりん1:しょうゆ1」というこのルール、簡単に覚えるには、水がカップ1強(210㎖)に、残りの調味料はすべて大さじ2(30㎖)、とすればいい。肉じゃがも筑前煮もこれで材料が柔らかくなるまで煮込むだけ。(※野菜だけの煮物を作るときは、7をだしに)

本来はだしや水で食材が柔らかくなるまで煮て、その後に味が入りやすい順に砂糖、みりん、しょうゆ、と加えていくところだが、家庭料理ならはじめから一緒に煮ても十分おいしい。「気軽に作りたいから、気をつけるべきハードルは少ないほうがいいでしょう?」というのが行正式。

もちろん、応用は自在だ。鶏手羽肉、鶏もも肉、豚バラ肉などの肉類、そしてれんこん、里芋、大根、にんじん、かぶ、竹の子といった根菜類にねぎ、玉ねぎ、なす、しいたけなどの野菜、さらに豆腐や厚揚げなどの食材もおいしい。

煮るときに豆板醤やコチュジャン、粉山椒を加えるといったアレンジも受け止めてくれる。まずは冷蔵庫にある食材からなんでも煮てみよう。

おふくろの味に仕上がる肉じゃが Photo by 川上輝明

定番料理こそルールに頼る

現代の日本人はいろいろな国の料理を食べる民族だ。朝ごはんにトーストとコーヒー、昼にパスタ、夜にカレーライス・・・といったパターンも珍しくない。毎日のように和食を作っていたのは過去の話で、そうした私たちにとって、和食の味つけはすぐに思い出せないことも多い。

料理を作るたびにいちいち料理本を探すのは面倒だ――ということで人気なのがネットの料理サイトだが、必ずしも安定した味とは言い難い。

かつては誰もが頭に入っていた定番料理こそ、ルールに頼ってほしい。なにしろ、確実においしく失敗しないで作れるのだ。そして気軽に作っているうちにこの味を基準として自分好みの味が見えてきて、アレンジもできるようになる。

しょうが焼き=さみしさ+しょうが同量
(同量の酒、みりん、しょうゆ、砂糖とおろししょうがのたれで焼く)

さばのみそ煮=さみしさに、みそも同量 水ひたひた
(同量の酒、みりん、しょうゆ、砂糖と水、ひたひたの水で煮る)

ハンバーグ=牛2:豚1 13分
(牛ひき肉2に対して、豚ひき肉1を混ぜる。焼き時間は13分)

ごま和え=3:1:1
(ごまが3に対して、しょうゆと砂糖が1の和えごろもで和える)

ピクルス=1:1
(すし酢とお好みの酢をそれぞれ同量のたれに漬ける)

ハンバーグは「牛2:豚1 13分」Photo by 川上輝明

塩かげんさえ合っていれば

和食の調理法の基本は「焼く、煮る、揚げる、蒸す、切る(生)」の五法。これに現代は「和える、炒める」が加わる。このうち、いちばんシンプルな調理法が「焼く」だ。シンプルだからこそ、塩かげんが何よりも重要となる。

覚えておきたいのは、魚2%、肉1%ルール。

それぞれ重さに対しての塩の量だ。魚の塩焼きだったら100gの切り身に2%、つまり2gの塩(小さじ2/5)を振って焼けばいい。サンマだろうがアジ、イワシ、鯛、どんな魚でも応用できる。肉も同様に、たとえば二人分のハンバーグなら、300gのひき肉に対して1%の塩(3g/小さじ1/2強)を混ぜるといい塩梅となる。

味つけに迷ったら、この万能ルールを思い出そう。

「和食ビギナーも“適当に”和食を作っていた人も、これらのルールがあれば、『今日はおいしくできた』から『今日もおいしくできた!』となるはず。せっかく作るのだから、ただお腹を満たすためだけでなく、舌も心も満たされるように!」

「塩かげん」と「火かげん」のルールを学べば、和食がこんなに簡単に!
行正り香(ゆきまさ・りか)
高校時代からカリフォルニアに留学し、UCバークレー大学を卒業。帰国後はCMプロデューサーとして活躍。2007年に退職後、料理家に。『誰か来る日のメニュー』(文化出版局)、『今夜は家呑み』(朝日新聞社)、)、『19時から作るごはん』『行正り香のインテリア』(講談社)、ほか40冊以上の著書がある。作りやすさを第一に考えた、簡単で見栄えのするレシピが魅力。著書は中国語、韓国語等にも翻訳され、海外の視聴者を対象としたNHKワールドでは、料理番組『Dining with the Chef』のホストを務め、世界に向けて日本料理をプロモートしている。