「なぜ私は示談したのか」高畑裕太レイプ事件、被害者女性が告白

性犯罪被害者にしかわからない恐怖
週刊現代 プロフィール

聴取を担当してくださったのは、若い男性検事さんと女性検事さんです。ただでさえ、初対面の人に被害内容を話すことは憚られます。

ところが、担当の女性検事さんから、

「なぜ大きな声を出さなかったのか」

「なぜ壁を叩かなかったのか」

などと淡々とした口調で質問を浴びせられ、だんだん自分に非があるのかもしれないと思ってしまいました。そして、女性検事さんから、

「自分の身を守るためなら大声を出すべきだったと思う。何でそうしなかったの」

という言葉を聞き、検察は自分を守ってくれるところではないと思ってしまったのです。

さらに検事さんからは、強姦致傷罪の場合、裁判員制度の対象にされるという説明もあり、

「裁判員裁判になれば、相手側の弁護士からもっときつい追及がある」

と訊かされ、裁判が進めば、加害者側の弁護士に何をされたのかを根掘り葉掘り聞かれて、検事さんの事情聴取のほかに裁判所でまた恥ずかしい思いをすることになるのかと思いました。

その日の聴取は5時間に及びました。

もちろん、検事さんがしつこく確認するのは加害者の有罪を立証するためだと理解しています。しかし、聴取を終えたときには、これ以上つらい思いをするなんてもう耐えられない、被害にあった私を守ってくれるところはどこにもない、早く終わりにしてしまいたい。そう思うようになり、それ以上何も考えることができず、もう終わりにしたほうがいいと考えるようになりました。

これが示談に応じた理由です。正直、示談したことが正解だったのかわかりません。いまでも気持ちが整理できず、食欲もわかず、体重が落ちてしまいました。頑張って食べても吐いて戻してしまうのです。

被害者にしか分からないこと

家族の前では以前と何も変わらないように努めていますが、一人になったときにその反動が押し寄せてきてしまいます。

テレビもインターネットも極力見ないようにして、ベッドで横になっている時間が多いのですが、目を閉じると、突然あの夜の加害者の目がフラッシュバックするんです。加害者は釈放されたときに睨むような目をしていましたが、あれよりも鋭い目つきです。怖くなってしまい、結局、毎日2時間くらいしか眠ることができません。

* * *

以上がAさんの証言である。彼女の悲痛な言葉は、裏を返せば、性犯罪被害の実態を訴えることができない女性が数多く存在するという現実を物語っている。

現在、高畑は埼玉県内の心療内科の専門病院に入院しているという。

Aさんに高畑への思いを聞いた。

「いまは自分のことで精一杯です。しかし、釈放後は謝罪ではなく、むしろ開き直りともとれる加害者側弁護士のコメントを知り、怒りを覚えます。

性犯罪の被害者にとって、大声で助けを求めればよかったのではないかという決めつけが一番傷つきます。自分なりの精いっぱいの抵抗をしたつもりですし、相手の言いなりにならなかったら、大ケガをさせられていたといまでも思っています。それくらい怖くて何もできない状態だったことを分かってほしいです。

仮に裁判において、抵抗が弱かった、叫んで助けを求めなかったなどという理由で加害者が無罪になってしまうのであれば、被害者は泣き寝入りするほかありません。

私の容貌や自宅が特定されかねない報道もあり、本当に怖いんです。被害者にしかわからない恐怖、痛みをわかってほしいと思います」

今回の事件は、芸能一家に起きた衝撃的な事件として世間の注目を集めた。しかし、芸能人が関わる事件だからと言って、被害者について何を報じてもいいというわけではない。性犯罪の被害者がどれほど深い傷を負い、苦しむのか。その現実を忘れてはいけない。

『週刊現代』2016年11月5日号より