前号(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50023)で被害者が事件の詳細を告白した後、「示談せずに裁判で闘えばよかったじゃないか」という声がネット上にあがった。だが、今号の告白を読めば、それが見当外れの批判だったことが分かるだろう。
取材・文/齋藤剛(週刊現代記者)
「知人男性」は何者なのか
「心はいまだに闇の中にあり、傷も一生消えないような苦しみにあります。なぜこんなに不安を感じているのかも、正直いまだによくわかりません」
こう話すのは、俳優の高畑裕太(23歳)によるレイプ被害を受けたAさんだ。本誌の先週号にて、Aさんは、高畑による「強姦致傷」がどのようなものだったか、勇気を振り絞り、以下のように赤裸々に明かした。
・ドアを開けた瞬間に、凄い力で部屋に引きずり込まれ、耳元で『脱げ』と言われた
・頭を押さえられ、『咥えろ』などと命令された
・ホテルの従業員が騒ぎを起こすわけにはいかず、なにより高畑の目つきが恐ろしく、大声を上げることはできなかった
・必死に抵抗を続けたが、最後はズボンを脱がされて無理やり挿入されてしまい、中で射精された
これは「高畑裕太さんは合意があると思っていた」とする高畑側の代理人の主張や、高畑の供述に基づいて作成された週刊文春9月29日号に掲載された記事の内容とはまったく異なるものだ。
だが、「合意の感情は一切なかった」というAさん本人の告白を受けてもなお、高畑側の弁護士はすぐさま10月14日に、
「女性のお話によっても、明らかな暴行や脅迫は認められないものと認識しています」
というコメントを発表した。こうした一連の高畑側の主張は、様々な憶測報道を呼び、事件当日以降もAさんを苦しめ続ける要因になっている。
「事件を警察に通報したAさんの知人男性は暴力団関係者で、Aさんに診断書を取るために病院へ行くよう指示した」
「知人男性は高畑側と示談をめぐって交渉し、破格の示談金を要求した」
——こうしてAさんは性犯罪の被害者でありながら、「金目当ての美人局」という疑惑をかけられてしまう。
知人男性は、どのような役割を果たしたのか。そして、なぜ示談をしたのか。今回、ついにAさんが事件の最大の謎を明かす。
* * *
加害者(高畑)にレイプされた後、怒りを通りこした絶望的な気持ちを抱えたままホテルを出て、あてもなく車を走らせました。警察に通報することも考えましたが、家族に伝わってしまうかもしれないと考えて躊躇してしまいました。強姦されたなんて、家族には絶対に言えません。
私が被害に遭ったことを知ったら、家族はショックを受け、ひどく傷つくでしょう。その結果、家族関係までぎくしゃくしてしまうかもしれないと考えました。
一人で抱え込むべきか、それとも警察に言うべきなのか。どうしていいかわからず、結局、ホテルの近くに住む知人男性に相談することにしました。