ネイティブも認めた!怖いくらい通じる「カタカナ英語」の法則

脳科学に基づく目からウロコのメソッド
池谷 裕二 プロフィール

結論1
私にはカタカナ発音しかできない。これは「日本人として生まれ育ったのだから、今さら英語特有の発音を身につけようがない」という科学的根拠から来る諦念です。

結論2
それゆえに私の発音は本来の発音からひどくかけ離れたものであって、アメリカでは通用しない。

結論3
しかし、私のカタカナ発音を別のカタカナに置き換えることによって、多くの場合は通じさせることができる。

とくに結論3は重要なものでした。

ほとんど諦めかけていた私の英語力ですが、努力次第では通用するレベルにまで改善される可能性がある──絶望のどん底で見た一条の光。大いなる希望を与えてくれるものでした。

 

英会話を諦めかけた人へ

私は脳研究に専念する傍ら、期待を胸に、英語の発音についても試行錯誤するようになりました。

私はカタカナ発音を丹念に調べあげて、英会話のライブ現場でカタカナを駆使して発音してみました。もちろんそれは失敗の連続でした。ただ幸いなことに、私の仕事場には、日本語を勉強したことのあるアメリカ人がいました。

彼は日本語と英語がどれほど異なっているかをよく知っていました。同時に彼は日本人にとって英語の習得がいかに難しいかも理解していました。親切にも彼は私の英語の発音を逐一修正してくれます。

しかも、それは単なる修正ではなく「日本人ならばこう発音すればよいはずだ」という適切なアドバイスでした。

その結果、いくつかの秘訣に気づいたのです。それが本書で述べる「カタカナ発音の法則」。実践に基づいた経験則です。

ある日、私と同じようにアメリカ留学していた日本人の友人に、この法則について披露すると予想以上の反応がありました。もしかしたら私以外にも多くの人が同じような問題を抱えて悩んでいるのかもしれない。

だとしたら、この成果を私だけに留めておくのはもったいない──。その後も様々な人に相談するうちに、この確信はますます深まりました。そんな考えに導かれ、ついに本書を上梓する運びとなりました。

〔PHOTO〕iStock

もちろん私は英語の教師でもなければ、英語のための特別な教育を受けてきたわけでもありません。それどころか、私がアメリカに住んだのはほんの2年半にすぎません。英語での会話なんて正直まだまだです。むしろ今でも英会話は苦手で、できれば避けて通りたいところです。

しかし、私には、英語について、とりわけ英語の発音について人並み以上に真剣に考えてきた自負があります。もちろん、これから本書で述べる発音方法は、カタカナを振り当てている以上、完璧な英語の発音というわけにはゆきません。しかし「日本人が英米人に英語を通じさせる」という観点に立てば、より適化された方法だと確信しています。

英語の上級者には「カタカナ発音など邪道な学習法にすぎない」と一蹴されてしまうだろうと思います。この本は完璧を目指すものではなく、「まずは当面事足りればよい」というスタンスですから、英語の専門家や教育者からは痛烈な批判を受けることは十分に承知しています。

この意味で本書は、超初心者である私が超初心者に贈る「超初心者のためのカタカナ発音奮闘記」だと理解していただければと思うのです。すべての人に必要な本ではないけれども、私のように英会話を諦めかけた人には読んでいただいて損はないと思います。いや、本心を言うのならば、そういう人にこそ手にとっていただきたいと思うのです。

この本には、学校の授業でしか英語を習ってこなかった人はびっくりするような内容が含まれていることでしょう。従来のどんな教科書とも、またプロの教師が教える洗練されたノウハウとも異なった、英語初心者のための実用的な克服法です。

だから今までの発音の知識を一旦リセットして欲しいと思います。先入観は新しいことを学習する妨げにもなります。そこで、本書では最初に「意識改革編」を用意しました。

なぜカタカナ発音がよいのかをしっかりと納得してから学習を始めれば、モチベーションも長続きし、習得もよりスムーズになるでしょう。

意識改革編のあとの本編は2つのパートに分かれています。「実践編」「法則編」です。どちらから読み始めていただいても問題ありません。

細かい話はよいからともかく一刻も早くカタカナ発音の効能を知りたいという方は実践編からスタートしたらよいと思いますし、理屈を理解してからでないと脳がすっきりしないという理論派タイプの方は法則編から始めたらよいかと思います。どちらから手を付けても差し支えなく習得できるように工夫してあります。

最後のパートは「理論編」です。本書の目的から考えれば、ほんのオマケのようなものです。言語習得と脳にはどんな関係があるのだろうか、ネイティブとそうでない人にはどんな違いがあるのだろうか。そんな最新の脳科学の知見を解説してみました。さらに効率的な勉強法についても書いてみました。興味のある人は読んでいただければと思います。

この本の利用にあたって注意点があります。それは本書がいわゆる読本ではないということです。あくまでも練習ドリルです。流し読みをするだけでは期待した効果は得られません。時間をかけてじっくりトレーニングを実践して欲しいと思います。 

「自転車の乗り方を解説本で読んでも、実際に乗れるようにはならないのであって、何かをやる方法って、実際にやる、という経験によって培われます」 〔『海馬』(新潮文庫)より〕

転びながらも自転車乗りの練習を根気強く繰り返した、あの頃を思い出してください。効能が現れるまでには時間が必要です。

同じ例文を最低でも連続70回は声に出して発音してみなければ効果は見えてこないと思います。さらなる効果を期待するのでしたら、学習した日の就寝前に再び10回、翌朝また10回繰り返すべきです。私は時間が許す限りはこれを実行しています。