# フィリピン

麻薬犯虐殺の次は原発も視野に…フィリピン大統領の暴走はまだ序の口?

意外としたたかな面も見えてきた
大塚 智彦 プロフィール

せめぎあう「メンツ」と「実利」

ドゥテルテ大統領は東南アジア諸国連合(ASEAN)の首脳会議出席のため9月にラオスを訪れたのが初の外遊となったが、ASEAN域外への初めての外遊として10月18日から21日まで中国を公式訪問、その後、25日からは日本を公式訪問する。

ドゥテルテ大統領は当初、初の域外外遊先として日本を予定していたが、中国政府の「ぜひ日本より先に中国を訪問して欲しい」との意向に基づく駐フィリピン中国大使の強力なアピールによって順序が逆転した経緯がある。

中国政府はこの結果を「外交的勝利」として、習近平主席以下政府要人が最大級のもてなしで歓迎する準備を整えている。フィリピン側もドゥテルテ大統領に同行する経済関係者を当初の20人から250人に拡大して、大経済ミッションを送りこむ予定だ。

こうした一連の動きを冷静に、そしてドゥテルテ流を勘案して観察してみると、「メンツを重んじる中国」に対して、メンツや建前よりも経済支援という「実を選んだフィリピン」という構図がみえてくる。

中国は日本を出し抜き、南シナ海問題を、フィリピンと2国間で解決する糸口にしようと「大盤振る舞い」で迎えようとしている。

これに対しフィリピンは、中国を先に訪問したところで「大人の国」である日本は怒らないと判断したのだろう。南シナ海問題については、言質を取られない程度に中国の秋波になびくそぶりをみせ、経済援助だけはしっかり確実にせしめる腹積もりである。

思い出してほしい、フィリピンは南シナ海の領有権問題で中国をオランダ・ハーグの仲裁裁判所に提訴し、7月12日に全面的勝利の裁定を得ているのだ。

「裁定は紙屑」「南シナ海問題は2国間で話し合いを」と主張する中国に対し、ドゥテルテ大統領は時に応じるそぶりをみせてラモス元大統領を特使として中国に派遣した。

その一方でヤサイ外相は「裁定は最終的なもので拘束力がある」「(中国と)領有権問題で対話する用意はない」「フィリピンは領有権問題で譲歩はしない」などと強硬姿勢もみせた。

この使い分け、言い分けこそがドゥテルテ大統領の「したたかさ」といえる。

 

したたかな「カラバオ」

国際社会では海千山千の中国外交だが、ドゥテルテ大統領はその中国をすら手玉に取ろうとしている。

彼が「したたかな曲者」であることに中国はまだ気が付かないのか。あるいは、とっくに気付きながらもアフリカ外交と同様に「なんだかんだ言っても結局は金になびく」と過剰な自信を持っているのか。真相はわからない。

この中国VSフィリピンのつばぜり合いは、老練で巨大な「竜(中国の国獣)」に挑む若く意気軒高は「カラバオ(水牛の一種=フィリピンの国獣)」 の対戦にも見えてくる。

その後に予定される日本での首脳会談では、安倍晋三首相に対して、「超法規的殺人」への国際社会の懸念を伝えるよう期待が寄せられているというが、果たして安倍首相はズバリと指摘することができるだろうか。

できたとしても、ドゥテルテ大統領が単なる外交辞令で応えるのか、「内政問題だ」と袖にするのか、見ものである。こちらはさしずめ「雉(きじ=日本の国獣)とカラバオの闘い」とでもいえようか。

いずれにしても、ドゥテルテ大統領の中国、日本での言動からは目が離せない。この男が、米国の大統領候補ドナルド・トランプ氏と肩を並べるほど稀有なキャラクターを持つ「ニュースな人物」であることだけは疑う余地がない。