ヒラリーvsトランプ2回戦、手に汗握る「殴り合い」を再現してみた

3分でわかる第2回公開討論会【前編】
徐 東輝 プロフィール
3 Eメール問題
【質問】ヒラリー候補、あなたは過去のEメールの取扱について「過ちだった」と言っています。しかし、FBI捜査官の「極度の重過失だ」との意見には同意してきませんでした。110の機密情報のやり取りがなされ、そのうち8通はトップシークレットとされているものでしたが、これは「極度の重過失」ではないのですか?
【ヒラリー・クリントンの回答】第1回公開討論会でも述べたように、あれは過ちであり、否定するつもりはない。個人アカウントでやりとりをしたことの責任は私にある。二度とあのような過ちは繰り返さない。しかし、1年のFBIの調査により、いかなる外国勢力からもサイバーアタック、ハッキングがなされた形跡がないことが示されていることは指摘しておきたい。
【ドナルド・トランプの回答】ヒラリーはプライベートなメールだったというが、3万3千通ものプライベートなメールがあるはずがない。やはり、あのメールには機密情報が含まれており、ヒラリーは「機密情報」の文字が読めなかったのだろう。議会からの召喚令状が出てから、3万3千通ものメールが削除されていることもおかしな話だ。FBIがいくら証拠はないといっても、全く信用できない。
4 オバマケアについて
【質問】オバマケアと呼ばれる医療保険制度。月々の保険料も上がり、年間自己負担額も上がり、診療ごとの自己負担額も上がり、誰もが加入できる制度には決してなっていません。どのようにしてコストカットをし、より良い保障内容とするのでしょうか。
【ヒラリー・クリントンの回答】確かに年間自己負担額や月々の保険料の値上がりは把握しており、コストカットは必須事項、次の大統領に課せられた最優先課題である。しかし、2000万人もの保険未加入だった人々に保険が行き渡ったことを知ってほしい。現在アメリカ国民の90%に医療保険制度が行き渡っており、これはアメリカ史上最高の数字である。トランプはオバマケアを辞めることがコストカットだというだろうが、それはこれから述べるメリットが無に帰すということだ。1億7千万人の被雇用者にとって、オバマケアは4つの点で優れたメリットを持つ。「契約前発病の場合でも保険加入を拒否されることはない。」「契約者に対する上限年齢がない。これは重病患者には重要な点である。」「女性が男性よりも多く保険料を支払う必要がない。これはオバマケアによって初めて実現したことである。」「26歳以下の子供は、両親が保険証券を持っていれば、26歳まで同じ保険証券で加入できる。」
【ドナルド・トランプの回答】ご存知の通り、オバマケアは大惨事だ。どんどんと負担額は高額になっていき、自滅しようとしている。オバマ政権は議会に金を求め、どんどんと借金を増やすしか方法がない。オバマケアは別の、より効果的で負担の少ないものに切り替えるしかない。少数の保険会社による寡占・独占状態をやめ、市場に競争をさせる必要がある。自由競争だ。
 
5 ムスリム問題・難民問題
【質問】トランプさん。アメリカ国内には330万人のイスラム教徒がいて、私もその一人です。あなたはイスラムの国々と戦うと言い、イスラモフォビア(イスラム教徒恐怖症)を引き起こしました。「国への脅威」とレッテルを貼られた私たちに、選挙後どのように手を差し伸べ、サポートしてくれるのですか。
【ドナルド・トランプの回答】悲しいことだが、望む望まないにかかわらず、イスラム教徒については少なからず問題がある。それは認めなければならない。サンバーナディーノ、オーランド、ワールドトレードセンター、パリ、これらは全てイスラム過激派によるテロ行為だ。ヒラリーやオバマは決して口に出さないが、これははっきりと言わねばならない。問題を解決するには、これがイスラム教徒の問題だということをしっかりと認識し、私のように明確に指摘できなければならない。
【ヒラリー・クリントンの回答】わが国にはモハメド・アリのような偉大なムスリムもいた。私のアメリカに対する展望、次世代に残したいアメリカとは、すべての人に居場所のあるアメリカである。トランプの述べるデマゴーグのような美辞麗句は、非常に危険である。これが過激派テロリストらの狙いそのものであり、私たちとイスラム教徒、アメリカに協力してくれるイスラム圏の国々を分断しようとする狙いにまんまと引っかかっているのである。アメリカには、あなた(質問者)とあなたの家族が他の誰かと同じように歓迎されるような国であってほしいと思う。
(写真)差別的な落書きをされるデトロイトのモスク(2007年)
【質問】トランプ候補、あなたはかつて「当局が事態を把握するまで、アメリカ合衆国に入国するすべてのイスラム教徒の入国を完全に拒否する」と述べていました。しかし、今週の副大統領候補の討論会で、あなたの伴走者であるマイク・ペンス氏はもはやそれはあなたの主張ではないと言っていました。これは本当ですか。宗教テストを行うというのは誤りだったのでしょうか。また、ヒラリー候補は、シリア難民の受け入れを現在の1万人から6万5千人に広げようとしていますが、厳格な入国審査をしてでもこのようなリスクを取るのはなぜですか。
【ドナルド・トランプの回答】すべてのイスラム教徒の入国禁止という政策は少し形を変え、一定の地域からの入国に関して非常に厳格な入国審査を行うという政策にした。価値観はもちろん、アメリカへの態度も何もわからないまま、シリアの難民を何十万人も受け入れることはできない。
【ヒラリー・クリントンの回答】もちろん厳格な入国審査のもと、リスクと思われる入国は決して容認しない。しかし、シリアで起きている悲劇は、子供や女性に降り掛かっている。ロシアが攻撃的になって起こった悲劇に対して、我々は我々の役割を果たすべきだ。宗教の自由を認めるアメリカの厳格な入国審査は、宗教に基づいて行われてはならない。そもそも宗教テストをどのようにして実施するのか、その実現可能性すら見いだせない。

以上が討論会前半のダイジェストです。

今回の2人の服装は、第1回とは異なる雰囲気で、トランプ氏が赤色のネクタイ、ヒラリー氏は白色のシャツに黒のジャケット姿でした。

討論は、序盤、例の女性に対するトランプ氏の問題発言が大きな議論になったこともあって、早速その問題が1問目に切り出され、トランプ氏は防戦一方という印象でした。

しかしヒラリー氏のEmail問題に話が移ると一気に攻勢に出て、調子を取り戻し始めます。ヒラリー氏のスキャンダルをどんどん追及し、時には会場から拍手を受けることも。もちろんスキャンダル、問題発言の多さはトランプ氏が格段に多いわけですから、ヒラリーも負けじと応戦していきます。

振り返ってみれば、第1問目で大統領としての品格が問われ、第2,3問目にお互いのスキャンダルについて聞かれるという、大統領選挙とは思えないなんともトホホな内容でした。

しかし、その後に問われたオバマケア、ムスリム・難民への対応については、第1回の討論会では詳しく言及されなかった部分であり、両者の対立点が明確に現れた時間となりました。

ちなみに、トランプ氏は見るからにヒラリー氏の発言を遮る回数が減っていました。(それでも相当多かったのですが。)もしかしたら前回の討論を受けて、「あまり話を遮らないように」と指導を受けたのかもしれません。

さて、後半はスキャンダルではなく、アメリカがいま直面している壁とその解決策について多くの質問が出されました。 後半のダイジェストもお楽しみに!

(→後編はこちら http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49941)

徐東輝氏が「ジャーナリズム型クラウドファンディング」として取材資金集めを行っているCAMPFIREのウェブサイトはこちら

徐東輝(そぉとんふぃ)
京都大学法学部、同法科大学院卒、同大学総長賞受賞。2016年度の司法試験に合格し、現在米国大統領選を現地で取材中。
非営利団体Mielka(旧ivote関西)代表・世界経済フォーラム(ダボス会議)グローバルシェイパー・G1 U30ボードメンバーなどを務める。
著書『憲法の視点からの日韓問題』(TOブックス、2015年