高齢童貞、派遣切り…『逃げるは恥だが役に立つ』は、実は社会派漫画

ドラマが好調だが、原作をご存じか?
松澤 夏織

処女のまま生理が上がる──高齢処女のリアル

本作では、高齢童貞・高齢処女の問題も描かれる。津崎は36歳の高齢童貞。みくりの伯母・百合は52歳の高齢処女で、未体験のまま閉経をむかえている。

「高齢童貞の津崎は長い独身生活でプロの独身と自ら言うくらい独身をこじらせています。『面倒くさいやつだなあ、でも、こう思ってしまうのよね、しょうがない、しょうがない』と思いながら描いています。百合に関しては、彼女のように美人で仕事ができる人は意外と独身の方が多いように感じています。

みくりと百合の関係は、独身もしくは子供のいない叔母に可愛がられていたという知人たちの話が元になっています。友達とも親とも違う、ちょうどいい距離感や甘え、責任感。自由でおしゃれで頼もしい、年の離れた素敵なお姉さんみたいな感じですね。そんな彼女たちが抱く悩みや悲しみ、諦め、悟りはみくりたちの世代とはまったく異なります。マンガの中ではそれをきちんと描きたいんです」(同氏)

「みくりや百合は誰かに認められたいと言いますが、決して結婚や仕事を承認欲求を満たすためのツールにはしていません。個人的にはそういうものは何か一つに絞らず分散して持っていたほうが、生活はしやすいと思っています。

ひと昔前は、いい年して恋人がいないのはおかしいとか、家事は女性がするもので旦那さんは『お手伝い』してくれるとか、女性がずっと独身なのは行き遅れで恥、男性が女性より稼ぎが少ないのは恥、みたいな空気があったと思います。

この連載中、いろんな年齢、タイプの独身男性にお話を伺ったのですが本当に人それぞれでした。今は周りに幸せだと判断されるより、自分が幸せだと思えるほうがいいという考え方が認められるようになってきていると感じています。10年前だったら、もうちょっと保守的な考えが強かったかもしれません」(同氏)

ライフプランが多様化する中、津崎の同僚・風見のように恋人はいるが結婚を望まない人間もいる。

最新コミックス8巻で、急接近した風見と高齢処女・百合の関係にはどんな名前がつくのか? 友達、同志、それとも──? 夢物語ばかりでないリアルな恋愛と結婚を描いた『逃げるは恥だが役に立つ』から目が離せない。

取材・構成:松澤夏織

派遣切りにあって、再就職もままならないみくりは、父親に、会社の部下・津崎さんのハウスキーパーを頼まれる。そしてある日、津崎さんから思いがけない提案が!?(amazonはこちらから