2016.10.05

ジャック・マイヨールを超えた「素潜り世界一」の日本人をご存じか

島地勝彦×篠宮龍三【第1回】
島地 勝彦 プロフィール

篠宮 ホントですか。これは沖縄であちこち探してみたんですが、どこにも売っていませんでした。ですから今日が初体験です。おお、アルコール度数が52.49もありますね。

シマジ これは信濃屋のバイヤーがドイツでみつけてきた、いまは亡きインペリアル17年です。葉巻によく合うシングルモルトなんですよ。その昔、シングルモルトの人気が落ち込んで、1980年代初頭に次から次へと蒸留所が閉鎖されました。有名なポート・エレンもその一つですが、インペリアルも同じ憂き目に会ったんです。では、スランジバー!

篠宮 スランジバー、これをシマジ先生といってみたかったんです。

シマジ 先生はやめてください。死んだ親父が学校の先生だったので、そう呼ばれるとどうも親父を思い出してなんだかこそばゆい気分がするんです。

篠宮 うん、このインペリアルは素晴らしい味わいですね。コクがあって、心地よい余韻が続きます。

シマジ 発売と同時に完売した逸品です。末吉も一杯飲む?

末吉 いえいえ、今日はこのあと会社に戻らなければいけませんので遠慮しておきます。

シマジ ヒノは?

ヒノ いただきます。

シマジ お前は一度も断ったことはないよね。訊くだけヤボだったか。

ヒノ 申し訳ありません。

シマジ 別に謝らなくてもいいんだよ。お前は働き者だからなんでも許す。篠宮さんは、スポーツ青年ではなかったそうですが、大学生のときはどういうサークルに入っていたんですか?

篠宮 法政大学の理工学部に在籍していまして、サークルは探検部に入っていました。

ヒノ え、本当ですか。じつはぼくも探検部でした。

シマジ ヒノ、お前もか。

ヒノ はい、ぼくは早稲田ですが、篠宮さんとはまったく同い年ですから、ひょっとしたらどこかですれ違っていたかもしれません。

篠宮 早稲田の探検部ですか。名門中の名門じゃないですか。

シマジ 片や法政大学の探検部、片や早稲田大学の探検部か。

末吉 そうだったんですね。当時、そういうブームがあったんですか?

ヒノ 別に何かブームがあったわけではないと思うんですけど、たまたまぼくの時代は人数が多かったですね。法政は何人ぐらいいましたか?

篠宮 うちもけっこういまして、1学年10人ぐらいでした。たしかアウトドアブームみたいなものが少しあったと思います。

シマジ 早稲田の探検部はいろんな作家を輩出しているじゃないの。

ヒノ 古くは西木正明さん、船戸与一さん。最近だと高野秀行さん、角旙唯介ですか。角旙はぼくの同期です。

シマジ そうなんだ。

立木 おいシマジ、肝心の素潜りの話は訊かなくていいのか?

シマジ まったくその通りですね。話を戻しましょう。篠宮さん、水のなかにただ潜っているだけなら何分くらい息が続くものですか?

篠宮 じっとしてるだけなら、8分ぐらいはいけます。

シマジ 8分! 考えられないね。じゃあ、100メートルを縦に潜って行くとすると、何分ぐらいで折り返してくるんですか?

篠宮 だいたい2分間で潜って行って、そこから1分半で戻ってこなければいけません。そうしないとブラックアウトしてしまいます。

シマジ ブラックアウトというのは?

篠宮 酸欠による失神ですね。意識がなくなります。

シマジ それは海中で意識を失うんですか?

篠宮 深いところで失神したとしたら、ぼくはいま生きていません。たいがいは、最後の最後、水面ギリギリで酸欠になります。

立木 それって、もしかして失禁もしちゃうの?

篠宮 失禁まではしないと思いますけど、どうなんでしょうね(笑)。

立木 だって失神したらそうなっちゃうじゃない。海の中だと、パンツが汚れるわけじゃないから分かんないのかな。

シマジ アッハハハ、相変わらず、タッチャンは鋭い質問をしてくれますね。篠宮さんはブラックアウトの経験はいままで何度もあるんですよね?

篠宮 はい、何度もあります。記録に挑戦するときは、それだけギリギリのラインで闘わないといけません。

〈次回につづく〉

篠宮龍三 (しのみや・りゅうぞう)1976年埼玉県生まれ。2004年、27歳でプロ転向。05年フリーイマージョン種目で世界ランク1位となる。コンスタント種目では08年4月、バハマでアジア人初の100メ ートルに到達。09年12月にジャック・マイヨールの最高記録である105メートルを超え、107メートルを記録。10年4月、再びバハマで現アジア記録の115メートル(世界歴代5位)を達成。同年7月には日本・アジア初開催となる世界選手権を誘致し、自らも日本代表キャプテンとして銀メダルを獲得した。現在は国内唯一のプロ選手として競技活動を続ける傍ら、沖縄でスクールや大会を運営。環境イベントなどのプロデュースも行っている。著書に『ブルー・ゾーン』『心のスイッチ』『素潜り世界一』がある。

著者: 開高健、島地勝彦
蘇生版 水の上を歩く? 酒場でジョーク十番勝負
(CCCメディアハウス、税込み2,160円)
1989年に刊行され、後に文庫化もされた「ジョーク対談集」の復刻版。序文をサントリークォータリー元編集長・谷浩志氏が執筆、連載当時の秘話を初めて明かす。

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