世界で急増する「新・中華街」の実態〜40年でこんなに変わった!

地理学者による異色のフィールドワーク
山下 清海 プロフィール

フランスに限らず、今日、世界各地で新華僑が増加するのに伴い、新・中華街が形成されている。

1980年代以降、改革開放後の中国から、日本はもちろん北米、南米、ヨーロッパ、アフリカなど世界各地に、新華僑が渡って行った。伝統的なチャイナタウンを形成してきた老華僑とは異なり、新華僑によって新・中華街が世界各地でつぎつぎに誕生している。

ロサンゼルスやサンフランシスコでも、ダウンタウンのチャイナタウンとは別に、郊外に複数の新・中華街が形成されている。ニューヨークにおいても、マンハッタンのチャイナタウンとは別に、東のクイーンズ区やブルックリン区の新・中華街が、膨張を続けている。

カナダのバンクーバー郊外のリッチモンドは、新華僑によって形成された典型的な新・中華街である。トロントのダウンタウンにも伝統的なチャイナタウンがあるが、新華僑の増加により、郊外には新たに4ヵ所の新・中華街が形成された。

ヨーロッパでは、イギリスやオランダには、第二次世界大戦前から香港出身の老華僑が多く住んでいた。フランス、イタリア、スペインなどは老華僑が少ない地域であったが、すでに述べたパリをはじめ、イタリアのローマ、ミラノ、プラート(フィレンツェ郊外)、そしてスペインのマドリード、バルセロナなどにも、新・中華街が形成されている。

これらの国々では、どちらかというと伝統的な食文化が重視されてきたが、今や急速に中国料理が人びとの間に浸透し、新華僑経営の中国料理店が増えている。

 

注目されるのは、旧社会主義の東ヨーロッパの国々である。老華僑が少ない空白地帯であった東ヨーロッパだからこそ、大量の中国製品を販売できる可能性がある地域であり、大きなビジネスチャンスがあると考えるのが新華僑である。

ハンガリーのブダペスト、ポーランドのワルシャワ、ルーマニアのブカレストなどには、中国資本の大規模な小売・卸売のモールがつくられている。

1972年の日中国交正常化当時、在日中国人は5万人程度であったが、2015年12月末時点で、約71万人にまで増えている。それだけ、新華僑が増加したことを示している。

日本においても、新華僑の増加により、新・中華街が形成された。新華僑経営の中国料理店、旅行社、美容院などが東京の池袋駅北口周辺に増加していることに着目し、これこそ日本最初の新・中華街であると確信した。2003年、私は、ここを「池袋チャイナタウン」と命名した。

40年あまり、私は世界各地のチャイナタウンのフィールドワークに取り組んできた。このたび、講談社選書メチエの一冊として刊行した『新・中華街 世界各地で〈華人社会〉は変貌する』は、世界各地の新・中華街の形成と特色、変貌する華人社会、新華僑を送り出す中国の僑郷(華僑の故郷)とのネットワークなどを、現地調査にもとづいて考察したものである。

本書を片手に、世界を旅すると、きっと新しい発見があるはずである。

読書人の雑誌「本」2016年10月号より