激変する「不倫」事情〜男が恋を、女は刺激的なセックスを求める時代

主役はバブル世代のダブル不倫
亀山 早苗 プロフィール

妻に離婚届を突きつけられ、彼女とは音信不通に

だがもちろん、みんながみんな自制しながらうまくつきあえるわけはなく、恋にのめり込み自滅寸前となるケースもかなりある。

男性が陥りやすいのは、彼女が不幸そうだから何とかしてやりたいと思って無理をする恋愛だ。

「4年前、中学の同窓会で故郷に帰ったとき、当時片思いをしていた女性と再会。話を聞いたら都内で比較的近くに住んでいたことがわかって、東京でも会うようになったんです。最初は懐かしさと友情だけのつもりだった」

ヒロフミさん(仮名・48歳)はそう言ってため息をつく。何度か会って話をするうち、彼女が夫から精神的なDVを受けていることがわかった。

「夫からまったく愛情を受けていない。そんなひどいことがあるか、こんな素敵な女性なのにと腹が立って……。再会してから半年後にホテルへ行ってしまいました。彼女のことが本気で好きになっていた」

10年以上セックスしていないから無理と泣く彼女の体を丁寧に愛撫した。真心と愛情を込めたと彼は言う。そのかいあって、彼女もだんだんその気になってくれた。結ばれるまで3時間を愛撫に費やした。

「すごく感じてくれたことが嬉しくて。実は僕自身、数年間、妻に拒絶されていたので寂しかったんですよね。彼女と抱き合って泣いてしまいました。人肌の温かさと彼女の優しさに本当に感動してしまって」

ふたりは時間の許す限り、会って話して抱き合った。互いに子どもが成人したら離婚して再婚しようとも話した。ところが1年足らずで、ヒロフミさんの妻がいきなり離婚を突きつけてきた。

「目の前にサイン済みの離婚届を出されて、焦りました。妻は彼女に対しても慰謝料を請求しているという。夫に知られて彼女が窮地に追い込まれているのではないか、殴られているのではないか。それが心配で。

妻はそんな私の表情を察したのでしょう。『大丈夫よ、彼女のご主人には言ってないから』と。当時、うちの子どもは中学生と小学生。子どもと離れるのは耐えがたい。妻には土下座して謝り、離婚だけは回避しました」

彼女に連絡をとろうとしたものの、携帯電話がつながらない。昼間、自宅に電話してみても留守番電話になっている。数週間たったとき、おそるおそる妻に彼女のことを尋ねてみた。

「妻は『彼女からは慰謝料をいただきました。公正証書も作りました。それですべて終わり。次に会ったら違約金として500万円もらうということも書いてもらった』と。それ以来、彼女には会ってないと言うので、中学の同級生にこっそり調べてもらったんです。それでもわからなかった」

約1年後、やはり友人経由で彼女が離婚したことを知った。ふたりの女の子を抱え、一文無しで追い出されたらしい、とも。彼女はすでに両親が亡いので実家にも戻っていない。友人たちがカンパしてとりあえずアパートを借りたようだ。

それでも彼女はヒロフミさんとの一件をしゃべらなかったので友人たちは突然の離婚の原因を誰も知らなかった。それを聞いて、ヒロフミさんはひとり涙したという。彼女の潔さに比べて自分は……とも悔いた。

「専業主婦だった彼女が、仕事を掛け持ちしてがんばっていると聞きました。僕は妻に冷たくされているくらいで大きな変化はなかったけど、彼女の人生は僕とつきあったことで激変してしまった。申し訳なくて謝りたくて……。でも携帯を変えたのか連絡はつかないまま。いつか会えたらと思っています」

不倫という関係になったがために好きな人を傷つけてしまった。そのことを彼は一生、背負っていかなければならない。

誰にとっても「恋」が心の隙間に入り込むことはある

個人的には不倫を否定も肯定もしないし、現実として誰でも不倫に陥る可能性はあると思う。

配偶者および家庭に対して100%満足している人などそうはいない。人は結婚していても孤独を覚えるものであり、寂しさを感じるものだ。ひとりなら耐えられる寂寥感であっても、家族がいるがゆえに耐えられないこともある。結局、誰にとっても「恋」が心の隙間に入り込むことはあり得るのだ。

「気づいたら恋に落ちていた」

不倫をした人はみなそう言う。そこからその恋とどう向き合うか、相手とどう関わっていくか。引き時はいつなのか。家庭と恋愛を天秤にかけていいのか。

そうやってあらゆることを考えながら、「大人の恋愛」を続けていくには、相当な精神力が必要とされる。「不倫」と蔑視されがちな恋は、実はなまなかな覚悟ではまっとうできないのである。

亀山早苗(かめやま・さなえ) フリーライター。1960年東京生まれ。明治大学文学部卒。女性誌等で活躍中。女性の生き方を中心に、恋愛、結婚、性の問題に取り組み、かつ社会状況を的確に分析する筆力に定評がある。著書に『不倫の恋で苦しむ男たち』『不倫の恋で苦しむ女たち』『「妻とはできない」こと』『「夫とはできない」こと』『男と女—セックスをめぐる5つの心理』『「最後の恋」に彷徨う男たち』『婚外恋愛』『人はなぜ不倫をするのか』などがある。
「人はなぜ不倫をするのか」。きっと少なくない人が、その答えを探している。本書はこの問いかけを第一線で活躍する8名の学者陣にぶつけた本だ。「ジェンダー研究」「昆虫学」「動物行動学」「宗教学」「心理学」「性科学」「行動遺伝学」「脳」。さまざまなジャンルの専門家が、それぞれの学問をベースに不倫を解説する。