香港「裏ビジネス街道」を歩く~運び屋横丁、ボートピープル…

『クレイジージャーニー』裏日記⑧
丸山 ゴンザレス プロフィール

公園を占拠するナゾの女性たち

底辺暮らしを続ける人がいる一方で、大金持ちも存在するのが香港である。それを如実に示すのが日曜日の公園だ。

親子連れやカップルが遊ぶというようなのどかなものではない。銅鑼湾(コーズウェイベイ)のヴィクトリアパークを中心に、女性たちがこの公園を占拠してしまうのだ。

「何をしているんですか?」
公園にいた女性に声をかけると、気さくに応じてくれた。
「おしゃべりをしているだけよ。友達とここに毎週集まっているの」
「毎週ですか?」
「そうよ。私たちの仕事は日曜日が休みなんだけど、どこかに行ってお金を使うのがもったいないから、ここに集まることにしているのよ」

「どんなお仕事をしているんですか?」
「メイドよ」
「普段はどこにいるんですか?」
「オーナーの家に住み込ませてもらっているの」
 
香港のある一定水準以上の家には「メイド部屋」といわれる小部屋が必ずあって、そこに住んでいるというのだ。私が見たことのあるメイド部屋は、やや大きめなクローゼットぐらいのサイズで、人間が寝てしまえばそれ以上の隙間はないようなものだった。

「ところで、みなさんはどこから来たんですか? 香港の人じゃないですよね」

質問の時点で香港人ではないことはわかっていた。多くの女性がブルカ(イスラム教徒の女性が頭に被るベール)を身にまとっていたからだ。

「インドネシアからよ」
「ほかの人たちも同じですね」
 
私がインドネシアに行ったことがあるというと、嬉しそうに笑って雑談は盛り上がっていった。

取材の場所を中環(セントラル)に移すことにした。というのも、メイドたちが集まっているのは銅鑼湾だけではないからだ。中環には別の国から来た女性たちが集まっていた。それはフィリピンである。

高級ブランドショップの前にシートを敷いて、弁当を持ち寄りおしゃべりに花を咲かせる。女性ならではの楽しみ方ではあるが、道路を占拠している様子はなかなかに壮観である。

海外への出稼ぎ者が多いとされているフィリピン人は、もともと香港でメイドとして働く女性が多かったという。そこにインドネシア人も加わって、いまでは香港島の日曜の風物詩となっているのだ。

裏を返せば、これほどの人員を抱えられるだけの富を持つ人がいかに多いのかということを示している光景ともいえるだろう。